【飲食店の「点数」について】
このブログにおける「点数」はいわゆるグルメレビューサイトなどの評価点の考え方とは違います。
「5点:良い⇔1点:悪い」という評価基準ではなく、点が付いていればすべて「オススメ」の飲食店であり、点数の多寡でそのオススメ度合いを表現しています。
点数は料理の評価だけによるものではなく、対価、接客、立地、雰囲気などさまざまなファクターを総合した、あくまでも主観に基づく食後感によるものなので、絶対的な料理のクオリティと同期していないこともあります。
また、同一の店舗であっても訪問時期により点数が異なることがあります。
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☆☆☆☆☆(5点:とても好きなお店!)
☆☆☆☆★(4点:誰にでもオススメ!)
☆☆☆★★(3点:けっこうオススメ!)
☆☆★★★(2点:ちょっとオススメ!)
☆★★★★(1点:お好きな方はぜひ!)
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冷たい雨が降る夜に向かったのは不動前。
不動前駅から山手通りに出て少し歩くと見えてくるフランス国旗と、トリコロールを模したかわいらしいキャセロールのショップサインが目印。
今夜のお店はこちら「サダキ・デリ」。
「サダキ・デリ」の梶原節紀(かじわらさだき)シェフは昨年末に逝去した関西フレンチ界の重鎮、和田信平シェフ率いる「シェ・ワダ」で修行後に渡仏、帰国後の2015年にいまの店舗の向かいに「サダキ・デリ」を開店。
ちなみに和田信平シェフの人となりについては「ミチノ・ル・トゥールビヨン」の道野正シェフのブログ「和田さんのこと」に垣間見ることができますので、ご興味ある方はぜひ。
オープンして間もなく人気店になった「サダキ・デリ」、評判は耳にしていたのですがなかなか趣の有った旧店舗時代は伺う機会がなく、この夜が初訪問でした。
店内は満席。
ぎりぎりに予約したのでラスト一卓をゲット。って感じでしょうか。
店内は賑やかでどのテーブルもなんだか楽しげな雰囲気。
初めての訪問だったので料理のポーションなどをマダムに訊くと「料理は多めですよ。うちは満腹食堂ですから!」との由。
うん、いいじゃないの満腹食堂。こう言うビストロ、好きですよ。
前菜はニース風サラダ、鴨の燻製サラダ、自家製リエット、ラタトゥイユなどなど、どれもこれもウマそうな料理が15種類ほどがラインナップされていて、選択に悩みます。
お得な盛合せのプレートも有りますので、まずは3種類選んでみましょう。
この日チョイスした3種類は以下の通り。
前菜の盛合せは2名で1皿でちょうど良いボリューム感。
まずはテリーヌ、肉の味わいが濃厚で食べ応えがあります。
キッシュも柔らかな甘さを湛えたなめらかなテクスチャに上質さを感じます。
爽やかな風味のクスクスのサラダも素朴だけど滋味深い味わい。
3種類の前菜だけでも、料理の力感の一端が感じられて今夜のディナーへの期待が膨らみます。
メインディッシュの前に前菜をもうひとつ。
おふたりでシェアされても十分ですよ、と言うマダムのアドバイスを無視して(笑)、ひとりにひと皿、頂きました。
頂くとこのムースがとにかく濃厚。人参や魚介の旨味の凝縮感が印象的です。
ウマいし、この手の前菜、大好物なんですけど、確かにボリューム的にはシェアしても良いくらい。
ひとのアドバイスはちゃんと聞いておくものですね(笑)。
メインディッシュは肉料理を豪勢にふた皿。
まずは仔羊。
ゴロゴロっとガルニチュールがあしらわれ豪快なビジュアルですが、実際に頂いてみるとレア感を残してローストされた仔羊の繊細な食感に驚きます。
シンプルですが仔羊の味わいを余すところなく引き出され梶原節紀シェフの確かな手腕を感じるひと皿。
そしてもうひと皿の肉料理は鹿肉。
頂いてすぐに笑みがこぼれるような味わい。
ああ、これこれ。こう言う料理が食べたかったんだよ。そんな感じ。
クラシックで王道的な料理がちゃんとウマいって、実に素晴らしいことだと思います。
きめ細やかな肉質でありながら鹿らしい味わいもしっかりしているフィレ肉と香ばしいパイ、そして重厚なソースが織りなすどっしりとした存在感の有るメインディッシュでした。
こちらも大ポーション。がんばって完食しました(笑)。
重量感の有るメインディッシュを頂いてもういい加減満腹だったのですが、デセールは別腹ですよね。ってことで。
こちらも飾り気のないビジュアルですが味わいは上質です。
料理は前菜からメインディッシュ、デセールに至るまでいずれも揺るぎない量感と芯の有る力強い味わいに満ちていました。
そしてマダムの「満腹食堂」と言う言葉に違わぬボリューム感。
こう言うビストロ、好きだなあ。
近いうちにまた再訪してみたいと思います。
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・店名 サダキ・デリ
・住所 東京都品川区西五反田3-14-6
・電話 03-6417-3676
・備考 特になし。
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この夜はちょっとした打合せ兼全員同い年と言うメンバーによる食事会で御茶ノ水へ。
訪れたのは同行の友人が前から興味があると言っていたこちら。
「グルマンズ」。
扉のガラスの奥に「うり坊」の毛皮がディスプレイされているのが見えるでしょうか?
ご存知の方も多いと思いますが「うり坊」とは猪の子ども。
その名の由来になっている「瓜」のような縞模様がわかりますね。
ほの暗い店内にも毛皮や狩猟道具が見えます。
「グルマンズ」のオーナである中里寛(ひろき)シェフは実はハンターでもあり、タイミングが合えばシェフ自ら狩猟したジビエを頂くこともできるのだそう。
それにしても「グルマンズ」と言うネーミングが良いですね。
ぼくは「グルメ:Gourmet…美食家」ではなく「グルマン:Gourmand…大食漢」を自認しているので、店名だけでわくわくしてしまいます。
この夜は12品からなる「極コース」(8,000円)をチョイス。
それではさっそく料理のご紹介、いってみましょう。
「セルヴェル・ド・カニュ」とはフロマージュ・ブランに生クリームを混ぜ、そこにハーブやにんにくを加えた料理。
これを自家製のポップオーバーに付けて頂くと…これは止まらなくなりますね(笑)。
林檎の甘さとブルーチーズの刺激がよくマッチしていて美味。食欲を刺激するひと皿。
奥から時計回りに…。
アライグマは人生で初めて、かも。このリエット、実にコッテリしていてウマいのです。
そしてジビエのパテ ド カンパーニュ。使われている食材は鹿、猪、アナグマ、ヒグマ。
このパテ ド カンパーニュも味わい深く力強いひと品でした。
冬鹿ですがさっぱりとしたヴィネガーの風味のせいでしょうか、思いのほか軽やか。
この日のポタージュは安納芋を使ったもの。
安納芋の甘さとスープの熱々の温度感が真冬の夜に嬉しいですね。
そしてこちらも熱々のひと皿。
クリーミーなポテトの下にはヒグマのミートソース。
ヒグマ?と聞くと身構えてしまう方も多いともいますが、年末に頂いたヒグマも絶品でしたし、このアッシュパルマンティエのヒグマも味わい豊かで美味でした。
メインディッシュの肉料理、ひと皿目はロティにした猪。
どんな食肉でもオスとメスでは肉質に違いが有ると思いますが、猪の場合は秋から冬にかけてのメスが最上とのことで、オスに比べて肉質のきめが細かく、癖も少ないそうです。
こちらの料理は味付けもシンプルですが、癖らしい癖もなく非常に上品な味わい。
しかし豚肉より力強いと言いますか、濃厚な旨味が感じられるところが良いですね。
そしてアナグマ。
アナグマは実に味が良くて、日本に棲息する獣の中で一番ウマいなんて言うひともいる、と、ずいぶん前に聞いて興味を持っていた食材なんですが、そもそもアナグマってどんな動物か良くわからないですよね。
アナグマは本州、四国、九州などの里山に棲息するイタチ科の動物で、その名の通り地中に巣穴を掘って暮らしているそうです。
「同じ穴の狢(ムジナ)」と言う成句が有りますが、Wikipediaでその「狢(ムジナ)」の項を見ますと「ムジナ(貉、狢)とは、主にアナグマのことを指す」と有ります。
前菜のパテ ド カンパーニュにもアナグマの肉が使われていましたが、このポワレはアナグマそのものなのでわくわくしながら頂いてみました。
冬眠前のアナグマだったようで、脂身もたっぷり付いていましたが、このプリッとした脂身が美味。
肉質はやや噛みごたえが有りますが、噛み締めるとアナグマの旨味が堪能できます。
噂通りなかなか美味な食材でした。
そして意表を突く〆めカレー。
そう言えば神田〜御茶ノ水界隈ってカレーの名店が多いですよね。
そんなカレー激戦区のビストロのカレー、こちらもやはり本格派でした。
もう先ほどのアナグマまでで腹いっぱいだったので、ぼく以外のメンバーは半人前でオーダ。
ぼくは…もちろん一人前頂きました(笑)。こう言うことをしているから太るのですよね。反省。
濃厚なジビエの味に呼応するような濃厚な味わいのプリン。
素朴ですが滋味深い味わいです。
「グルマンズ」、初訪問でしたが店名に偽りなく、グルマンな方、特に肉好き、ジビエ好きのグルマンにぴったりのレストランでした。
ジビエだけでなく店内で熟成させた牛肉、豚肉なども評判らしいので次回はそちらも試してみたいですね。
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・店名 グルマンズ
・住所 東京都千代田区神田淡路町2-23
アクセス御茶ノ水ビル 1階
・電話 03-3526-2266
・備考 特になし。
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すっかりお屠蘇気分も抜けてみなさま既にお仕事モードかと思いますが、新年一発目のブログは昨年末の忘年会の食事から。
2022年の年の瀬、最後の最後にウマいもの食べて2022年を締めくくろうじゃないの、と言うわけで向かったのは東銀座。
昭和通りの東側にはいにしえの地名を冠した「木挽町通り」と言う通りが有るのですが、その通りを築地側から「清月堂本店」を目印に入り、料亭「松山」(ここ、政財界の大物が足を運ぶ有名な料亭なんだそう)のお向かいあたり。
建物の外から階段を降りて、ガス灯を模した風情のある灯りの奥に見えてくるレストランがこの日のお目当て、「ラ カーヴ デ ランパール」。
「ラ カーヴ デ ランパール」は「カーヴ(cave)=ワイン貯蔵庫」と店の名前に謳う通り、豊富なワインを楽しめるワインバー。
なのですが、ぼくたちが楽しみにしていたのはその料理。
「ラ カーヴ デ ランパール」の現在のシェフは湯澤貴博氏。
湯澤シェフの料理に出会ったのは2004年の暮れでした。
湯澤シェフはその当時表参道の「レストラン アンフォール」の新進気鋭のシェフとして話題になりつつあり、その噂を聞きつけて訪問したぼくたちも、すぐにその料理のファンになったのでした。
当時のスペシャリテ、アヴォカドとオマールのコンソメジュレを頂いてはこんなウマい前菜が有るのか?と驚き、鹿や山鶉、仔羊などの肉料理の力強さと洗練に感動したものでした。
それにしてもそれがもう20年近く前になるということに驚きますね。
「ラ カーヴ デ ランパール」の料理はコースに仕立てて頂くこともできるのですが、この日はアラカルトメニューから同行者と料理を選んでみました。
まずはアミューズとしてこちら。
ブーダンノワールはフランスの伝統的なシャルキュトリの一種で、豚の血を使ったソーセージですね。
「豚の血」と聞くとちょっと身構えてしまうひともいるかもしれませんが、もちろんこちらのブーダンノワールは雑味なくコクのある旨味に満ちています。
この夜はメインディッシュに肉料理を2皿と言う構成にしたので、前菜は魚介系からチョイスしてみました。
前菜のひと品目はこちら。
鰆はデリケートに燻製して香ばしさを纏わせ、レア感を残した絶妙の火入れにとどめています。
ロックフォールチーズを使ったソースは思いのほか優しい味わいですが、ロックフォールの独特の香りが料理を引き締めていますね。
クレープ ボナシェンヌは生地にじゃがいもを使ったクレープ。
浜名湖、と聞くとついつい鰻を思い浮かべてしまいそうになりますが、実はハゼも浜名湖の秋冬の名物なんだそうで。
ハゼと言えば天ぷらくらいしか食したことがなくあまり馴染みのある食材ではなかったのですが、味わいは淡白で実に上品でした。
そして繊細で優しい味わいの印象を一変させるアクセントとして塩いくら。この塩いくらが良いですね。
そして前菜のトリは同行の友人からのリクエストで牡蠣を使った料理。
ほとんどの食材に好き嫌いはないのですが、牡蠣は自分から好んで食す食材ではありません。
なので、自分だけだったらこの料理を選ばなかったと思うのですが、結果としては友人に感謝することになりました。
この料理、半世紀以上生きてきて、人生でいちばんウマい牡蠣でした。いや、大袈裟ではなく。
牡蠣の濃厚な旨味と華やかな香りのフランボワーズのヴィネガーが相まって実に滋味深い料理に仕上がっていました。
下野(しもつけ)の甘みと旨味のバランスが取れた葱もこの牡蠣に負けない存在感です。
いや、牡蠣ってウマイなあ(笑)。
そしてメインディッシュのひと皿目。
この日のいちばんの驚きがこの料理でした。
カルボナードとはベルギーの郷土料理で通常は牛肉をビールを使って柔らかく煮込む料理。
熊も人生で何度か頂いた記憶はありますが、旨味こそ強いものの、そこはそれ、やや野趣が強いと言いますか、癖も感じたものでした。
しかしこちらで頂いた熊、食材を教えられずに口にしたのであれば、熊の肉と言い当てるのは難しいかもしれません。それくらい洗練されています。
強いて言えば牛肉に近い食感、味わいでしょうか。
しかしただ洗練されているだけかと言えばそうではなく、バラ肉と言うこともあり旨味の強い脂身で力感あふれるひと皿。
実に素晴らしい肉料理でした。
メインディッシュのふた品目は仔羊。
仔羊を使った料理は湯澤シェフの作る料理のなかでもぼくが特に好きなものなので、メニューに仔羊が有ったことを確認し迷わずチョイス。
レストランで料理を頂く楽しさっていろいろ有って良いと思うのですが、その本質はやはり料理を食べてそのウマさに感動するところに有ると思うのですね。
もちろん日本で頂くフレンチ、決してお安いお値段の食事ではありませんから、ビジュアルの美しさやプレゼンテーションも大切な要素ではありますが、口にしてああウマいなあ、と思えるような料理自体の味わい、力感がぼくにとっては大切なのです。
調理の技法やテイストこそ変化すれど、湯澤シェフの肉料理に一貫しているのはその味わいの力強さ、芳醇な香りでしょうか。
この夜の仔羊のローストでもそれは変わらず、絶妙な火入れによって仔羊の味わいがあますところなく引き出された力感の有るひと皿はフレンチを頂く楽しさに溢れていました。
意表を突かれたのがガルニチュールの秋刀魚と茄子。
主張の強い秋刀魚が肉料理のユニークなアクセントになっていました。
こちらは湯澤シェフではなく「ラ カーヴ デ ランパール」のスタッフ、見上さんの手によるデセール。
金柑のコンポートを添えたショコラのテリーヌは滑らかなテクスチャと濃厚なショコラの香りが印象的な、上等なデセールでした。
コロナ禍でかつてのようにレストラン巡りができなくなり、すっかり外食の頻度も低くなってしまった昨今ですが、久しぶりに湯澤シェフの料理を頂いて改めて思ったのは、ウマい料理ってほんとうにウマいし、ステキなレストランで料理を頂くのはとても楽しい、と言う極めて当たり前のことですが、最近すっかり忘れかけていたことでした。
2023年は今までより少し外食の機会を増やして素晴らしい料理との巡り合いを楽しみたい…この日のディナーはそんな気持ちになるような、食べる楽しみに満ちたものでした。
間違いなく2022年で最高の料理、一年の良い締めくくりになりました。
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・店名 ラ カーヴ デ ランパール
・住所 東京都中央区銀座7丁目15−5
共同ビル 地下1階
・電話 03-6228-4885
・備考 火曜~土曜は26時ラストオーダ
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この日はまたしてもグルメな友人のご招待で「荒木町たつや」のプラチナシートの末席に加わらせて頂いたのでした。
飲食店が軒を連ねる「車力門通り」をぶらぶら下り、金丸稲荷神社の脇の細い路地を進むと見えてくる「荒木町たつや」の暖簾。
「荒木町たつや」のご主人の石山竜也氏はかの名店「神楽坂石かわ」一派の出身。
この荒木町で「荒木町たつや」として独立したのが2017年、程なくして予約が取れない人気店となってしまいました。
本日のひと品目は毛蟹と湯葉、そして梨の菊花餡。
彩りも華やかで今夜の料理への期待に心が踊るひと皿。
この夜の椀種は甘鯛と十種類以上のきのこ。
甘鯛の濃厚な旨味ときのこの秋の香りが調和しています。
お造りは右から真鯛、クエ、松皮鰈。
クエはもっちりとした弾力感のある食感が印象的。
そして高級魚として知られる松皮鰈はいまが旬、あっさりとしていながら滋味深い味わいはさすがです。
金目鯛と緑と赤、二色の万願寺唐辛子。
添えられた花椒の若芽がユニークなアクセントです。
そしてこの日の白眉がこちら。
くまもとあか牛「阿蘇王」の炊合せ。
この「阿蘇王」の香りの良さに陶然。和牛らしい華やかな香りと旨味に負けない出汁の力強さも印象的です。
阿蘇王の旨味をたっぷり湛えた出汁は雑炊に。
この日の料理もいつも通り端正で拡張高い素晴らしい料理でした。
超人気店ゆえ次回の訪問はだいぶ先になってしまいそうですが、次の訪問が今から楽しみです。
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・店名 荒木町たつや
・住所 東京都新宿区荒木町10
タウンコートナナウミ 1階
・電話 03-6709-8087
・備考 予約は月初営業日の正午より電話にて受付。
・参考記事 2022年04月26日「荒木町 荒木町たつや」
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もういい歳なので隠居ポジションでのんびり仕事をさせて頂きたいのですが、ここ数ヶ月若いころのように深夜まで働かさ…いえ、働いていて、なかなかゆっくり夕食を楽しむことができていませんでした。
そこでひさしぶりに友人たちとちょっとウマいものを食べに出かけることにしたのです。
この日のメンバーはことし1月に恵比寿の「P」と言うステーキハウスを訪問したときとほぼ同じ面子。
詳しくはその日のブログをご覧頂きたいのですが、その「P」が稀に見るレベルのがっかりレストランで、その日の別れしなに、そのうちステーキハウス、リベンジしようね?と言い合って帰路に着いたのでした。
と言うことは?と言うことは?
このメンバーで行くならステーキハウスしかないでしょう。
で、訪問したのがこちら。
六本木一丁目、泉ガーデンの「BLT STEAK ROPPONGI」。
ちょうど周年記念で通常は19,500円のTボーンステーキが5,000円OFFになっているのを友人がめざとく見つけてくれたので、いつもよりちょっとお得にTボーンステーキを頂いちゃおうと言う魂胆です。
こちらはBLT名物のポップオーバー。
写真だと大きさが伝わりづらいかもですが、おとなの拳ふたつ分くらいの大きさです。
なんども「BLT STEAK」を訪問しているメンバーから「コレをウマいウマいと調子に乗って食べて、いざステーキが来た時に腹いっぱいでふうふう言いながらステーキを食べる羽目になったヤツをたくさん見てきた」と言う忠告を受けた危険な食べものです。
ぼくですか?
もちろん前菜のタイミングからウマいウマいと食べ進みお代わりまで頂きましたけど(笑)。
前菜は魚介から2種類。
シュリンプカクテルの海老はなかなかの大きさでしたが、身はちょっと硬めで味わいも凡庸。
でも香りの良いカクテルソース、これは良いですね。
マグロのタルタルはキューブ状に美しく積層されていてなかなかフォトジェニックだったのですが、崩すと普通のタルタルになっちゃいますね(笑)。
前菜はもうひと品。
サラダは定番のシーザーサラダでも良いかな、と思ったのですが、結果としてはこのサラダが大正解。
ちょっとスモークの風味を付けたドレッシングが良かったです。
そして前菜を食べ終わるとちょうど良いタイミングでステーキが卓上へ。
Tボーンステーキの焼き加減はミディアムレア。
選べるソースは「レッドワイン」、「ブルーチーズ」、「ペッパーコーン」、「チミチュリ」の4種類。
ドライエイジングされたUSプライムビーフはまずその熟成香で食欲を刺激してくれます。
熟成香を楽しんだあと、まずはサーロインから頂いてみます。
かなりじっくりと熟成を掛けているようで、旨味の凝縮感を感じますね。
火入れの具合も程よく、900℃以上の高音で焼き上げると言う表面はカリッと香ばしく、芯は美しいロゼ色に仕上がっています。
一方フィレはぼく的には少しあっさりし過ぎの印象。サーロインのほうが良かったですね。
あとオニオンリング。
好きは好きなんですけど、こちらのものはちょっと揚がりが重たくて腹に来ますね。
まあぼくがポップオーバー食べ過ぎたと言うこともあるのですが(笑)。
30分前の自分に忠告してやりたいですね、ポップオーバーは食べ過ぎるな、と(笑)。
だいぶ腹いっぱいですが、ここはアメリカ人になった気持ちでデザートもがんばりましょう。
タルトタタンが有るなんて良いですね。
デザートはこれぞアメリカン、と言う風情ではなくて、味わいもビジュアルも上品なテイスト、洗練された印象を受けます。
いずれも美味でした。
お支払はTボーンステーキの5,000円OFFが有ったのでひとり2万円弱。
立地、雰囲気、そしてステーキのクオリティを総合するとまずまず満足感の有るプライスではないでしょうか。
そのうちまた例のポップオーバーを食べに伺いたいと思います(笑)。
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・住所 東京都港区六本木1-6-1
泉ガーデン 5階
・電話 03-3589-4129
・備考 特になし。
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この日は仕事帰りにちょっとした打合せも兼ねて東京駅近辺で友人たちと夕食を頂くことにしたのでした。
現在、東京駅の日本橋口前に位置する大手町二丁目常盤橋街区では「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」と名付けられた再開発プロジェクトが推進中で、日本一の高さを誇る地上63階建て高さ390mの「Torch Tower」の建設計画が発表され先日話題になりました。
この日は同じ「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」のエリアに2021年に竣工した「常盤橋タワー」を初訪問。
こちらは「Torch Tower」より小ぶりですが、それでも地上40階建て高さ210mと言う威容を誇ります。
そして訪れたお店がこちら。「BRIANZA TOKYO(ブリアンツァ トウキョウ)」。
奥野義幸シェフ率いる「la Brianza」がまだ麻布十番に在ったころ、友人たちが「la Brianza」のファンで、当時その料理の評判は良く耳にしていました。
そのようなわけで、一度は訪問したいと思っていたものの、こちらの「BRIANZA TOKYO」も含め「Brianza」グループのリストランテを訪問するのはこれが初めて。
この日は乾杯のドリンクが付いて5,000円(税込)と言う激安コースをチョイス。
しかし、東京駅のド真ん前、最新のランドマークのなかと言う立地で5,000円、しかも税込でドリンク1杯付き。
これ…安過ぎではないでしょうか。
安過ぎて逆に不安になります。
案内されたダイニングは天井が高く開放的でリゾートの遊び心が感じられるインテリア。そして窓からは東京駅のビル群の夜景。
なかなかステキ…なのですが、テーブルの上にはタッチパネル式のタブレット端末。
確かに某大手グルメサイトでは自ら「次世代ファミレス」と名乗っていますが、それにしても、ねえ(笑)。
友人たちが到着するまでタブレット端末をいじりながら、ますます不安感にさいなまれるのでした(笑)。
前菜はこちらから。
この上なくシンプルですが、その生ハムのクオリティはコースの前菜にふさわしいクオリティでした。
奇を衒うことなくストレートに素材勝負と言う意気込みが感じられます。
ブラータチーズも最近はすっかりお馴染みの食材になりましたが、このブラータチーズも前の皿の生ハム同様、なかなかのクオリティでした。ウマいですね。
ここまで頂いてようやく食前の不安感も払拭されて少し安心できました。
このコース、悪くないかもよ?
前菜の3皿めは温かい料理。
こちらは奥野義幸シェフのスペシャリテとなるひと皿。
この価格帯のコースにもスペシャリテ、しかもトリュフを使ったひと皿を組み込んでくれるのはうれしいですね。
パスタはバジルを使ったスパゲティとボロネーゼのペンネ、2種類から選ぶことができます。
ぼくのチョイスはこちら。
「BRIANZA TOKYO」、ランチタイムのカジュアルなコースのパスタもウマいと聞いていたのでちょっと楽しみだったのですが、期待にたがわずこのパスタも良かった。
艶やかでハリの有るスパゲティの食感、香り高いバジルペースト、BRIANZAの名に恥じない上質さでした。
「BRIANZA TOKYO」のコンセプトは「炭火焼ラテンイタリアン」。
セコンドは「真鯛のジョスパー焼き」と「岩中豚の炭火焼」と2種類の炭火焼の料理から選ぶことができます。
どちらも魅力的ですがこの夜は岩中豚をチョイスしてみました。
シンプルですが岩中豚の旨味と「火」の力強さが感じられるぼく好みのセコンド。
コースにはドルチェも含まれています。
さすがにカフェ類は別料金でしたが、いや、すばらしいコストパフォーマンスではないでしょうか。
食前の心配は杞憂に終わりました。
ご覧いただく通り、ポーションは控えめ。ぼくたちのようなガッツリ系大好き男子ですと、その点で少し物足りなさを感じることは有るかもしれませんが、このお店を訪問するほとんどのかたは満足できるボリューム感だと思います。
良い意味で予想を裏切られる、驚きのコストパフォーマンスに大満足。
東京駅界隈でカジュアルだけど本格的なイタリアンが食べたいときにオススメできます。
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・店名 BRIANZA TOKYO(ブリアンツァ トウキョウ)
・住所 東京都千代田区大手町2-6-4
常盤橋タワー 2階
・電話 03-6262-7862
・備考 特になし。
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北海道ツアー2日目。
あいにくの雨模様の天気となってしまいましたが、せっかくなので美瑛方面までドライブ。
有名な「青い池」も訪問。雨だとあまり青く見えないと言う事前情報だったので期待はしていなかったのですが、いやいや、雨でも神秘的でした。こんなに青いんですね。けっこう感動します。
この日は3連休の中日と言うことで美瑛付近の人気レストランは軒並み満席。
なので、美瑛からは少し離れていますが、予約せずに入れる星野リゾート トマムのなかのレストランでランチを頂くことに。
訪れたのは星野リゾート トマムの「ホタルストリート」にある「カマロ・ステーキダイナー」。
ランチタイムには北海道牛100%のハンバーグなどをリーズナブルな価格で頂くこともできるのですが、せっかくなので竃で焼き上げるステーキを頂くことにしました。
1,620円を追加すると前菜、ガーリックライス、スープ、デザートがセットになります。
こちらは前菜。
そしてお待ちかねのステーキ。
さすが北海道のステーキハウス、蝦夷鹿が有りました。
ポーションは150g、300g、450gと選べますが、ステーキはもうひと品オーダするつもりだったので150gに自重、です。
「カマロ・ステーキダイナー」のステーキは竃でレアに焼き上げ、鉄板にセットされたペレットであとはお好みで焼き加減を調整するスタイル。
しかしペレットは使わないでも下の鉄板の余熱だけでちょうど良い感じ。
蝦夷鹿はあっさりと上品な味わいでした。
ステーキはもうひと品。
「カマロ・ステーキダイナー」のグランドメニューにラインナップされているステーキはブランド牛だけで3種類。
北海道を代表する黒毛和牛である「白老牛」、日高地方で特産の昆布を食べて育った黒毛和牛「こぶ黒」、そして北海道の東部、釧路湿原の程近くの標茶町(しべちゃちょう)で肥育される「星空の黒牛」。
これは悩みますね。
そしていずれもお値段はさほど変わらないので余計悩みます(笑)。
この3種類ですと「星空の黒牛」だけが交雑種となりますが、今回はあえてこの「星空の黒牛」をチョイス。
あえて、と書いたのは、実はこの日の夜は既に札幌に戻ってフレンチを頂く予定にしていたので、ランチのステーキは少し軽やかにしておきたかったから。
狙いはバッチリでした。頂いてみるとサシのきめ細かさと香りは程良く重すぎず、赤身とのバランスも好ましいもので、この「星空の黒牛」、気に入りました。
こちらもセットのひと品。
ステーキはいずれも良かったのですが、ガーリックライスはなぜか妙に甘ったるい味付けでせっかくのステーキの良さをスポイルしていました。これだけが残念。
今回は駆け足での訪問になってしまいましたが、ほんとうはゆっくり滞在して、その合間にゆるりと来てみたいようなレストランですね。
時間を忘れてひねもす何もせず、昼にはハンバーガー、夜にはステーキを頂く。1週間くらいそんな生活をしたいものです(笑)。
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・店名 カマロ・ステーキダイナー
・住所 北海道勇払郡占冠村中トマム
星野リゾート トマム ホタルストリートC棟
・電話 0167-58-1111
・備考 予約は不可となります。
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3連休を利用してひさしぶりにぼく的「こころのふるさと」である北海道へ。
旅の同伴者が美食家の友人、でもって、食事のチョイスはぼくに一任されていたのでお店選びにはだいぶ頭を悩ませましたが、旅の最初の一食にぼくが選んだのは新千歳空港国際旅客線ターミナル直結のホテル、ポルトムインターナショナル北海道のなかのレストラン。
ポルトムインターナショナル北海道は初めて訪れましたが、インバウンド富裕層がターゲットとおぼしき重厚かつスタイリッシュな設えでとてもステキな雰囲気。
ロビーと同じフロアには本物の茅葺の茶室まで用意されていました。
ダイニングは天井が高く豪奢かつスタイリッシュ。すばらしい。
アペリティフの小さなブーダンノワール、豚の血の代わりに鹿の血を使っているそうですが、豚の血より軽やかな風味です。
オマール海老、帆立貝のほんのり温かいサラダ
シェリーヴィネガーとアヴォカドのソース
前菜にはオマール海老と帆立貝。
「ほんのり温かい」とありますが、この「ほんのり」の温度感が絶妙。そして火入れの具合も絶妙でした。
シェリーヴィネガーのソースが爽やかです。
パンも実に上等。毎朝このパン食べたい(笑)。
添えられたバターはオホーツク海に面した乳業の町、興部(おこっぺ)産の発酵バターだそうです。
倶知安産きたかむいの冷たいクレーム
温かい牛テールの煮込みとポーチドエッグを添えて
「倶知安」、北海道の難読地名集のなかでは「初級編」ですね。
「くっちゃん」はニセコの近くに位置する、羊蹄山麓のじゃがいもの一大産地。
こちらはテーブルの上でスタッフの手で冷たいスープと温かい牛テールの煮込みを合わせてくれるという趣向。
こちらも絶妙な温度感が楽しいひと皿。
貯蔵することで糖度を高めた「きたかむい」を使ったスープ自体には、いわゆるビシソワーズ的な素朴感はなく滑らかでスッキリとした洗練された風味。
ここに牛テールの濃厚な旨味が加わることによって食後に重厚な印象が残ります。
鴨胸肉のロティ 安平産蜂蜜とエピスの香り
この日のメインは道央の滝川産の鴨の胸肉でした。
鴨肉自体は比較的あっさりとしたさわやかな風味。
そこに千歳の近く、安平(あびら)産の蜂蜜が加わることでコクとまろやかな深みが添えられ、最後にスパイスの香りで鮮烈な風味が残ります。
非常に端正かつ格調の高いメインディッシュでした。
リュバーブのクラフティ
リュバーブの上には華やかな薔薇の香りのムースとフランボワーズ。甘さと酸味、そして香りのハーモニーがすばらしいですね。
ギリギリまで甘さを抑えたカシスのアイスクリームがさわやかです。
料理はアペリティフからデセールまで隙がなくいずれも格調高く上等。
旅の始まりの食事として完璧なランチでした。
今回みたいに昼の飛行機で千歳に降り立ち、ランチを頂いて観光に出かける、と言うのも良いですし、遅めの飛行機ならディナーを頂いてその日はそのままポルトムインターナショナル北海道に宿泊、と言うのもありですね。
北海道旅行の際には再訪したいレストランです。
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・住所 北海道千歳市美々
新千歳空港国際線旅客ターミナルビル 4階
・電話 0123-45-6012
・備考 特になし。
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この日は仕事を済ませた後で大井町へ。
駅を降りて東急大井町線沿いにアーケードのある商店街を歩き「品川区役所前」交差点を右折して大崎方面へ。
深夜まで営業しているステーキの「B&M」のロッジ風の建物が見えてきたらそれは行き過ぎで、そのちょっと手前に見えているスペイン国旗がお店の目印。
そのお店がこちら。
「スペイン料理の店 Amunt(アムン)」。
スペイン料理、と言うだけなら都内では特に目新しくもありませんが、この「スペイン料理の店 Amunt(アムン)」ではスパニッシュに加えてジビエ料理も楽しめるのがユニークなポイントなのです。
この日が初訪問だったのでまずはいろいろな種類の前菜が一度に楽しめる盛合せを頂きましょう。
手前に見える魚介は鯖といなだ。いずれも酒呑みだったらついついグラスが進んでしまいそうな味付け。このあたり、センスを感じますね。
ボリュームたっぷりなのも嬉しいポイントです。
〆めにパエリアも頂く気まんまんだったので前菜のあとはすぐに肉料理を。
肉料理はもちろんジビエを頂くことに。
この日のジビエは鹿のローストと猪のロースト。鹿も捨てがたいのですが物珍しさでこの夜は猪をチョイス。
野趣が残るしっかりとした肉質の猪肉は噛みしめるほどに肉の旨味が口のなかに広がります。
コリっとした食感の脂身も美味。
味付けはシンプルですが、それゆえ猪肉の味わいをストレートに楽しむことができます。
そしてパエリア。
パエリアと聞くと具材に魚介を用いたものをまず思い浮かべてしまうかたが多いと思うのですが、この「パエージャバレンシアーナ」、つまり「バレンシア風パエリア」は兎の肉を用いたパエリアで、これがパエリアの原型と言えるレシピなのだそう。
米の炊き加減は思いのほかソフト。
ほら、割とお米の芯が残っているくらいのバリカタのパエリア、あるじゃないですか。
あれを本場っぽいと思ってしまいがちですが、実は本場のパエリアって芯が残っているような炊き加減はNGなんだそうです。
このパエリアもボリュームたっぷり。
この日は2名での訪問だったのですが、食べきれなかったのでお持ち帰りにして頂きました。4名くらいでシェアしても良さそうなボリューム感ですね。
だいぶ腹いっぱいだったのですが、せっかくなのでデザートも。
最近の定番のバスクチーズケーキですが、チーズの濃厚な味わいとこんがり香ばしい表面の風味が相まってこちらも実に味わい深いテイストでした。
さまざまなジャンルの飲食店が軒を連ねる大井町界隈ですが、本格的なスパニッシュに加えてジビエ料理を楽しめるレストランと言う「キャラの立った」ポジション、これなかなか良い立ち位置だと思います。
がっちりとスパニッシュを頂くのも良し、ジビエメインで肉を喰らうも良し、はたまたウマいタパスでワインを楽しむも良し、さまざまな使い方ができそうな佳店でした。
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・店名 スペイン料理の店 Amunt(アムン)
・住所 東京都品川区二葉1-7-12
・電話 03-6426-2190
・備考 特になし。
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この日は荒木町へ。
飲食店がひしめき合う「車力門通り」をぶらぶら下り、金丸稲荷神社の脇の細い路地を進むと見えてくるのがこちら。
「荒木町たつや」。
この夜もグルメな友人が予約してくれた「荒木町たつや」のプラチナシートにお邪魔したのでした。
ご主人の石山竜也氏がかの名店「神楽坂石かわ」一派の出身。
2017年にこの荒木町で「荒木町たつや」として独立するや瞬く間に予約が取れない人気店となってしまいました。
先付けには岩海苔で彩られた甘鯛の茶碗蒸し。
前回の訪問時に椀種として頂いた甘鯛もその味わいに感嘆した記憶が有りますが、この日の甘鯛も実に味わい深く美味。
この時点で今夜の料理への期待感が膨らみます。
蛍烏賊を使った春らしい飯蒸し。
山椒の香りが食欲を刺激します。
琵琶湖の「もろこ」と蕗の薹の天ぷら。
だいぶ前に滋賀に出かけたときに琵琶湖の鮎は頂いたことがあるのですが、琵琶湖ならではのもうひとつの名物と言える「もろこ」。こちらは初めて頂きました。
ひと口頂くと、ふんわりとした身の食感のなかに上品な味わいと香りを併せ持つ端正な味わい。
ずいぶん長く生きていますけど、まだまだ頂いたことのない食材、たくさん有りますね。
下世話な話ですが天然物の「もろこ」は流通量が少なくたいへん高級な魚で京都の一流の料亭などでしかなかなかお目に掛かれない食材のようです。
下世話な話ばかりではなんですから、食器についても。
日本料理を頂くときの楽しみのひとつである器。
器に関してはシロウトもシロウト、どシロウトなのですが、そんなぼくでもこの「もろこ」に合わせられた器の美しさには目を奪われました。
食材と器の取り合わせの妙がわかるような大人になりたいものです。
日本料理の楽しみである椀もの。
この夜の椀種は桜鱒と新わかめと蕪。
いまが旬の桜鱒は程よい脂の風味としっかりとした旨味が印象的でした。
お造りは水分をじっくりと抜いてねっとりした食感と甘さが強調されたあおり烏賊が印象的。
焼きものは鰆とアスパラガスでした。
鰆は表面の香ばしさとレアな部分のみずみずしさのコントラストが楽しめるように絶妙な火入れに仕上げられています。
そしてかいわれ大根。このかいわれ大根は近年一般的な水耕栽培ではなく昔ながらの砂耕栽培で育てられたものだそうで、ぼくの舌でその差がわかるかどうか甚だ自信が有りませんが、確かにピリッとした辛味の奥にほのかな甘さと言うか旨さが感じられ美味でした。
炊合せには猪と、その断面の美しさに思わず目を奪われる京都の筍。こちらを白味噌仕立てで頂きます。
しっかりとした食感の猪の身には野趣あふれる旨味が凝縮されていますが、その力強い旨味に負けることなく旨味をさらに引き立てるのが芳醇な白味噌の味わい。
その芳醇なお出汁で頂く雑炊。しみじみウマい。
もちろんお代りも頂きしたが、ぼくの本心を言いますと、永遠に食べ続けたい味です、これ(笑)。
甘味はマスカルポーネチーズと落花生に金柑のジャムを添えて。
この日も春の食材を存分に楽しめる素晴らしい料理の数々に大満足。
超人気店ゆえ次回の訪問はだいぶ先になってしまいそうですが、次の訪問が今から楽しみです。
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・店名 荒木町たつや
・住所 東京都新宿区荒木町10
タウンコートナナウミ 1階
・電話 03-6709-8087
・備考 予約は月初営業日の正午より電話にて受付。
・参考記事 2021年10月20日「荒木町 荒木町たつや」
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この日は大崎で用事を済ませたあとで、春風に誘われぶらりと徒歩で五反田へ。
お目当の店はこの界隈の飲食店に詳しい友人が教えてくれた、夜ごと満席になると言うイタリアン。
予約をしていなかったので、席が空いていれば滑り込もう、と言う魂胆です。
その店がこちら。
派手な看板には「ぽるこ」と店名が光り、黒板には「豚づくし」の文字。
スタッフに予約なしでも入れるか訊いてみるとちょうどタイミングよくカウンター席が空いたと言うので、さっそく入店。
「ぽるこ」(Porco)とはイタリア語の「豚」。
その店名の通り看板メニューは豚肉料理と聞いていましたので、前菜はバランスを考えて魚介系を。
なんでも値上りしちゃう今日この頃、770円なんて嬉しいじゃないですか。
ボリュームだってふたりでシェアするのに十分。
味わいもこれがまた770円と言うお値段から想像するレベルを良い意味で裏切るもの。
550円。冗談みたいなお値段です。
このサラダもボリュームたっぷり。ボリューム考えたらサイ●リヤより安いかも。
そしてゴルゴンゾーラチーズの濃厚な味わいとくるみの香ばしさが相まって味わいも本格的。
カルパッチョとサラダのふた皿を頂いただけですが、この時点で既に「ぽるこ」の人気の理由を理解したのでした。
肉料理に行く前にもうひと皿。
ソテーされた香ばしい香りと素材自体の甘さのコンビネーションが良いですね。
春らしい気分が高まるひと皿でした。
そしてお待ちかねの肉料理。
豚肉料理がウリと言う「ぽるこ」だけに、このグリルのほかにも、たとえば岩中豚のLボーンステーキだったり、イベリコ豚のグリルだったり、銘柄も調理法もバリエーション豊かでメニューのチョイスに悩んでしまいます。嬉しい楽しい悩みですね。
この夜は豚肉のウマさをストレートに楽しみたかったのでシンプルなグリルをチョイスしたのですが、このチョイス、大正解でした。
青森県の西部に位置する鰺ヶ沢町の「長谷川自然牧場」が生産する「長谷川熟成豚」は、通常より長い時間を掛けて肥育されることでより甘くより柔らかな味わいの肉質を持つそうですが、確かに頂いてみるとすっきりとした風味のなかにどっしりとした脂の甘さが感じられる上質の豚肉でした。
この日は雲丹を使った濃厚なパスタをチョイス。
これはパスタに限った話ではありませんが、頂いた料理はいずれもウマさのどストライク、って感じなんですよね。奇を衒ったりサプライズを求めたり、と言った要素はありませんが、ブレなくウマい王道の味。
日常使いするイタリアンってこう言う料理で良い…と言うか、こう言う料理が良いですね。
〆めのパスタまで頂いて腹いっぱい。
最近外食する機会がめっきり減ってしまい、こんなに腹いっぱいになるまで夕飯を食べるなんて久しぶりでした。
腹いっぱい…なのですがせっかくなのでドルチェも頂きました。
ドルチェも素朴なビジュアルなのですが、ほっこりしてしまうウマさでした。
店内が狭く席数も限られていますのでふらりと訪問するのはちょっと難しいのですが、席が空いてさえすれば躊躇なく入店することをオススメします。
今回は頂かなかったのですが内臓料理のメニューも豊富なので、次回訪問する際には試してみたいと思います。
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・店名 ぽるこ
・住所 東京都品川区東五反田2丁目9-7
ピロティ五反田 1階
・電話 03-6753-6472
・備考 特になし。
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この日は訳あって平日の田町へ。
芝浦公園の紅梅もちょうど見ごろ。もうすっかり春ですね。
平日の昼どきの田町で何を食べるか。
選択肢が多すぎて悩みます。
はたまたオシャレにプルマンのダイニングでランチってのも有りだし、一度は行ってみたい名店「リストランテ ラ チャウ」なんてのもステキだし。ランチならそこまで高くないよね?
そうだ。もう一軒、行きたい店が有ったんだ。
それがこちら。
「トンカツX」。
田町駅前の再開発の中心となる「Msb Tamachi 田町ステーションタワーN」の1階だけあって、昼どきの店内は近隣のオフィスのビジネスパーソンたちで満席、さらに5人ほどのウェイティング。
とんかつの匂いを楽しみつつ待ちましょうか。
「トンカツX」と聞いてとんかつ好き、肉好きの方ならピンと来るかもしれませんが、「トンカツX」の「X」は東京都が開発したプレミアムポーク「トウキョウX」の「X」。
「トンカツX」は「トウキョウX」を扱うミートパッカー業者である株式会社ミート・コンパニオンが経営母体と言うこともこの店に興味を持った理由なのですが、ぼくが訪問したいと思った理由はそれとは別にもうひとつ有ったのです。
それは「トンカツX」の料理が宮前平の名店「とんかつ しお田」の監修によるものと聞いたからなのです。
「とんかつ しお田」、前から一度行きたいと思っていたのですが、用事が無いとなかなか行かないエリアゆえ訪問の機会が無かったのです。
その「しお田」の味わいのエッセンスが楽しめるのではと期待したってわけです。
さて、この日の料理ですが…。
ランチタイムの主力は「トウキョウX」ではなく「弓豚SPF」を使った定食。
ランチタイムでも「トウキョウX」を使ったとんかつをオーダできるらしいのですが、そのお値段は4,000円ほど。
率直に申し上げますと、とんかつに4,000円、ぼくにはちょっと高いように感じます。
とんかつってぼくにとっては手軽に食べられるちょっとしたごちそうと言うポジションなんですね。
それこそ4,000円出すなら「ラ チャウ」でランチコースが食べられてお釣りが来ちゃうし(誤解なきように申し添えますと、ぼくは料理に貴賎なしと信じていて、イタリアンがエラくてとんかつがエラくないなんて言うつもりはまったくありませんよ)。
そんなわけで、ぼくのチョイスはこちら。
200グラムのトンカツは厚みこそ標準的ですが、そのぶん面積的にはなかなかのインパクト。
断面はこんな感じ。
肉質は…うーん。ご覧頂いた通り。ちょっと期待はずれかな。
それよりも気になったのは衣。
ザクザクっとした力強さは好みなのですが、まず油切れが悪くて重たすぎる。そして箸で持ち上げようとすると衣がぽろぽろと剥がれてしまいます。
訪問したあとで某大手グルメサイトでレビューを読んだのですが、多くのかたがこの衣の剥がれは指摘されていますね。
揚げ油には「トウキョウX」のラードも使われているとのことで、その力強い香りが最初のひと切れ、ふた切れくらいは好ましく感じるのですが、いかんせん油をじっとりと吸い込んだ重たい衣のとんかつを食べているとその香りがトゥーマッチになってきます。
残念ながら「とんかつ しお田」監修の恩恵はあまり感じられず、お値段なりの満足感は得られず、でした。
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・店名 トンカツX
・住所 東京都東京都港区芝浦3-1-1
msb Tamachi 田町ステーションタワーN 1階
・電話 03-6435-2904
・備考 特になし。
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この日は麻布に所用があり、ちょうど昼どきだったので麻布十番で昼食を頂くことにしたのです。
新一の橋交差点で悩むことしばし。
どちらも悪くない。実に悪くない。
いやしかし、そう言えば目の前にある「麻布永坂 更科本店」。
この前を何百回も通っているけど、一度も暖簾をくぐったことがなかったのでした。
たまにはさっぱりと蕎麦なんてのも悪くないですね。
入口には英語のメニューもあったりして。
さすがインターナショナルタウンのアザブジュバーン。
「ざる」には"Oseiro garnished with roasted, shredded laver to bring out the flavor"って書いてあります。
「海苔」って"lavor"と言うのですね。
非常にややこしいのですが、麻布十番には「更科」を名乗る蕎麦屋が3軒あります。
「総本家」やら「本店」やら、どれが本家なのか、どれが正統なのか、訳がわかりませんね。
麻布十番にある「更科」の始祖は江戸時代に麻布永坂で堀井清助と言うひとが興した「信州更科蕎麦所 布屋太兵衛」なのですが、こちらは昭和初期にいちど廃業。
戦後の昭和23年にまず「1」が「永坂更科本店」と言う店名で馬場繁太郎と言うかたの手により開業。
昭和24年には「2」が「麻布永坂更科 総本店」と言う店名で堀井家により開業。
この「1」と「2」の間で商号の使用権について訴訟となったりしたのちに、堀井家の八代目となる堀井良造により昭和59年に開業したのが「3」。
こちらは「信州更科 布屋総本家」と言う名称でしたが、「布屋」の名称の使用可否について訴訟となり、現在は「総本家 更科堀井」と言う名称となっています。
この3店舗のうち、ぼくがガキのころから通っていたのが「2」の「永坂更科 布屋太兵衛」で、いちばん馴染みが有るのですが、最近はちょっとその味わいが落ちているような気がします。
「3」の「総本家 更科堀井」も数回訪問したことがありまして、蕎麦のクオリティ的には」こちらのほうが断然良かった記憶が有ります。
で、この日訪れたのが初訪問となる「1」の「麻布永坂 更科本店」って訳です。
この日は天ぷらと蕎麦を頂くことにしました
天ぷらと蕎麦の組合せは4種類有ります。
日本語のお品書きにはいっさい解説が有りませんので、英語版のメニューから転載しますと…。
「もり」:
"Machine-cut soba noodles"
「せいろ」:
"Soba noodles freshly hand-cut each day by our expert chefs"
「御膳」:
"Snow-white, thin-cut soba noodles made using refined buckwheat"
「ざる」:
"Oseiro garnished with roasted, shredded laver to bring out the flavor”
「御膳蕎麦」(他店では「御前蕎麦」と表記)は、蕎麦の実の甘皮を取り除き、中心部分からごくわずかに採れる御前粉を使用した蕎麦。こちらが更科系の蕎麦の代名詞でしょうか。
上品ではありますが蕎麦らしい香りと言う面で劣りますので、あえて「御膳」を外して「せいろ」を頂きました。
蕎麦の前に熱々の天ぷらを頂きましょうか。
なかなかの大きさの海老が2尾。
海老はレア感を残したちょうど良い頃合いの揚がり具合。
そのあたりは良いのですが、衣がいわゆる「花揚げ」なので、ちょっと衣の存在感が強すぎるような気がします。もちろん天丼などで頂くならこれで良いのですが。
蕎麦はさほど主張が強い部類ではありませんが、コシの強さが印象に残ります。
このハリの有る食感、けっこう好きです。
喉ごしもよく、風味もまずまず。
老舗らしく手堅く安心感有る味わいでしょうか。
お値段は2,500円オーバとちょっとお高い印象もありますが、麻布十番と言う場所を考えればまあまあ納得感の有るお会計でしょうか。
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・店名 麻布永坂 更科本店
・住所 東京都港区麻布十番1-2-7
ラフィネ麻布十番 1階
・電話 03-3584-9410
・備考 特になし。
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本日は29…にくの日にふさわしいブログでもいってみましょうか。
昨年2021年10月にオープンするや、マスコミなどでも大々的に取り上げられて一瞬で予約の取れないレストランになってしまった「ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京」。
生来のあまのじゃくなので、話題のレストラン、下世話な言い方ですと「いま行っておくとちょっと自慢できるレストラン」みたいな店に行くことは稀で、この「ピーター・ルーガー」もぼく的には縁遠いレストランだと思っていたのですが、自粛生活であまりにもやることが無かったので、ついついホームページの予約システムを確認してしまったのです。
噂通り数ヶ月先まですべてのテーブルが埋まっているのを確認して一度はそっとホームページを閉じたのですが、日を改めて何度かチャレンジすると、瞬間的にポツポツとキャンセルが出ていることを発見。
そりゃ、数ヶ月先の予約日なんて、どんなスケジュールが被るかわからないもんねえ。
そんなわけで思ったより早めに予約が取れてしまったので、この日は仕事もきっかり18時で切上げ恵比寿に向かったのでした。
恵比寿駅東口から動く歩道で恵比寿ガーデンプレイス方面に出て、日仏会館方面に歩くと…お!見えてきましたピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京。
ここ、もともとは「MLB café TOKYO 恵比寿店」が有った場所ですね。
外観はもともとの建物に少し手直しした程度ですが、なかなかゴージャスで雰囲気が有ります。
こんな異国情緒のある建物が街並みに違和感なく溶け込んでいるところはさすが恵比寿。
初心者なのでエントランスを間違えました。
道路に面しているこちらの出入口はショップの入口でした。
レストランのエントランスは中庭に面したこちらでした。
うーん、素敵。
レストラン好き、にく好きのかたには説明不要と思いますがピーター・ルーガーはニューヨーク、マンハッタンで130年の歴史を誇る老舗ステーキハウス。
その超名門ステーキハウスが初の海外出店に選んだのがここ東京。なんだそうです。
ちなみに日本での運営会社は「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」などで知られる株式会社ワンダーテーブルです。
ぼくたちが案内されたメインダイニングは2階。
メインダイニングの天井は3階まで吹き抜けになっていて、その3階は2階のダイニングを見下ろせる「劇場型」のレイアウト。非日常感の有る素晴らしい空間です。
細かいことですが椅子の掛け心地も素晴らしい。
ステーキハウスの定番と言えばサーロインとフィレを両方楽しめる骨つきのステーキ、いわゆる「Tボーンステーキ」ってやつですよね。
このTボーンステーキと言うスタイルをアメリカで最初に広めたのがピーター・ルーガー。
ピーター・ルーガーのTボーンステーキはひとり当たりのボリュームを約300gとして3種類の大きさから選ぶことができます。
ひとり当たりのお値段に換算しますと…。
となります。どれを選んでもそんなに変わらないですね。
天下のピーター・ルーガーでこんなみみっちい計算をしているのはぼくくらいだと思いますが(笑)。
Tボーンステーキですとサーロインとフィレ、赤身がちの部位になりますが、もう少しパワフルな部位ですと「リブアイステーキ」も用意されていて、こちらはだいたい500gで18,000円。
この日はボリュームもまあまあ行ける男子4人組での訪問だったので「Steak for Three」と「Rib Steak」と言うコンビネーションで攻めることにしました。
900g+500g=1,400g。ひとり当たり350gと言う計算です。
ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京のメニューはニューヨークの本店のものに忠実に倣っていて、前菜のラインナップはシンプル。
サラダ類、ジャンボシュリンプカクテル、ラムチョップと言ったところでしょうか。今回はステーキをおいしく頂くために前菜はあっさりめで。
ボリュームは4名でシェアしてもたっぷり。
酸味の強いはっきりとした味わいです。
シーザーサラダを食べ終えるや否やすぐに香ばしい香りと共にメインディッシュが登場。
サイドディッシュは2種類。
ピーター・ルーガーのステーキはいちどブロイラーと呼ばれる直火オーブンに入れて500度の高温で外側をしっかり焼き、その後肉をカットし溶かしたバターと共に皿に乗せたまま再びブロイラーに入れ、数分間焼いた後にその皿でテーブルにサーブされます。なので、皿の縁まで飛び散った油の焦げ跡が有りますね。
こちらはリブアイステーキ。
Tボーンステーキもリブアイステーキも焼き加減はミディアムレアでお願いしたのですが、リブアイステーキのほうがレア感が強いですね。と言うか、こちらが本来のミディアムレアかな。
テーブルにサーブされたステーキはスタッフの手によって皿の縁で少しだけ熱を加え、ひとりひとりの皿へ。
左手がリブアイ、右手がサーロイン、サーロインに隠れていますが、奥がフィレ。となります。
まずはサーロインからひと口。
…。
…。
うーん。こんなものか?
もしかしたらぼく自身の体調が悪いとか、このご時世ですし、そう言うこともあるかもしれません。
若干心配になったのでグルメな友人に感想を求めると、感想は…店を出たら言います、と微妙な表情。
まずサーロインですが、肉質は詰まっており固め。
ピーター・ルーガーのステーキは、店舗1階の熟成庫で28日以上のドライエイジングを掛けているそうですが、ドライエイジングゆえの肉質の凝縮感は確かに有るのかもしれません。
しかし、それであれば肉自体の旨味もギュッと凝縮されているはずですが、その肝心の旨味の凝縮感が感じられない。
そして熟成香に関しては「雑味を感じる不要な熟成臭」はカットするのがピーター・ルーガー流とありますが、香りも乏しく、ウリであるはずの熟成の恩恵を感じられなかったと言うのが本音です。
フィレのほうがもちろん肉質はしなやかですが、味わいについての傾向はサーロインと同じです。
火入れについてはTボーンステーキは少し強すぎだったかもしれません。
断面を見て頂くとおわかりのように、ミディアムレアではなく、ミディアム〜ミディアムウェルと言った感じです。
救いだったのはお値段が安いリブアイがまずまず悪くなかったこと。
リブアイのほうが味わい、香りともに豊かでした。
この日訪問したメンバーのなかのひとりはアメリカで有名どころのステーキハウスを歴訪している猛者なのですが、食後感はぼくと似たり寄ったり。でした。
そんなぼくたちは、満席続きでエイジングが足りていない、食品流通の混乱で本来調達したいレベルのプライムビーフが入手できていない、焼き手の経験不足、と言った仮説を打ち立てたのですが、後日、業界のかたにこの日の憤懣をぶちまけたところ(笑)、そのかた曰く、日本の気候に合わせたエイジング設備、エイジング手法の合わせこみが完全にできていないのではないかな、と言う意見を述べておられました。
ちなみに2種類オーダしたサイドディッシュは悪くなかったです。
ソテーにしたブロッコリも後をひく味わいでしたし、クリームを使わず澄ましバターで仕上げる「クリームドスピナッチ」(ほうれん草)もまずまず。
気を取り直してデザートです。もう腹いっぱいですけど。
デザートは3種類を4名でシェア。
ケーキ類にはたっぷりのクリーム。アメリカンですねえ。
こんなビジュアルですし大味なイメージがあるじゃないですか?
でも、デザートはいずれも上等。
もちろんアメリカンスタイルの重量感たっぷりの甘さなんですが、品のある甘さで腹いっぱいにもかかわらずおいしく頂きました。
前菜も上等、サイドディッシュもまずまず、デザートも良かった。言うまでもなく雰囲気は最高。
つまり、ステーキ以外はけっこう良いです(笑)。
あとはサービススタッフ。
若いスタッフが多くフレンドリーなところは良いのですが、とても客単価2万円オーバのレストランのサービスとは思えない大味具合。でした。
会話を遮ってまでポイントサービス(そんなものが有るのですよ)への登録をリクエストされたり、ね。
高級店なら高級店らしい格調のあるサービスをお願いしたいものです。
こちらの期待値が高すぎたせいかだいぶがっかりしてレストランを後にしたのですが、別の日に訪問した友人によると、その日のTボーンステーキはかなり良かったとのこと。
タイミングが悪かったのか、それとも重要顧客とは認められず良い部位が出てこなかったのか、真相は闇のなかですが、今回の料理がピーター・ルーガーの本来の実力とも思えません。
料理のクオリティやオペレーションが落ち着いた頃にもう一度訪問したいですね。
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・住所 東京都渋谷区恵比寿4-19-19
・電話 050-3311-3744
・備考 特になし。
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またぞろ「まん延防止等重点措置」なんかが発令されてしまいなんとも冴えない新春ですが、本年もぼちぼち食べもの日記をアップしていきたいと思います。
2021年の年の瀬も迫ったこの日は、ひさしぶりに田町の「焼肉赤身にくがとう33895 田町・三田店」を訪問。
「焼肉赤身にくがとう33895 田町・三田店」は2014年に人形町にオープンするや、またたく間に東京でも屈指の人気焼肉レストランとなった「焼肉赤身にくがとう」の支店。
この日は「肉風呂VIPルーム」なる個室をお借りしての貸切焼肉会。
壁面の富士山は日本に3人しか存在しないと言う銭湯絵師のひとり、田中みずき氏が手がけたものだそうです。
この日の料理はおまかせのVIPコースでお願いしてみました。
それではさっそく肉ざんまいのVIPコース、ご紹介してきましょう。
【前菜】
【刺身】
この日のハツはたまり醤油漬け。たまり醤油の香りがハツの風味を引き立たせます。
【握り】
うっすらと赤みを帯びたレア気味の握り。食欲をそそるビジュアルです。
粒の生胡椒も良いアクセントになっています。
【逸品】
「ツラミ」は「面(ツラ)の身」、頬のあたりの部位ですね。
中華風に仕立ててあるのがユニークですね。
焼きものはまずはこちらから。
【焼肉】
タンは毎度ながら素晴らしい厚みが目を惹きます。
これを外側にカリッと焼き目が付くくらい炙ってから頂くと…中からはジュワッと肉汁が溢れ上等なタンの香りを堪能できます。実に上等なタンです。
ハツもハツらしい味わいと香りが濃厚でいながら雑味なくスッキリとした風味。
そしてハラミ。
ひと目見てそのクオリティを確信できるような美しいハラミは、ハラミならではの旨味の濃さに加え、きめ細かく入ったサシによる芳醇な香りも有り、絶品。
こう言うハラミを食べてしまうと、普通のハラミでは満足できなくなってしまうのが困るんですよね(笑)。
この3種をずっとリピートして食べていたいくらいですが、コースはまだまだ序盤。
【特選ホルモン】
ミノはレモンの風味でさっぱりと頂きます。
【特選肉】
もう、見るからにウマそうなカルビ。
サシはたっぷりと入っていますが、頂いてみるとこれが実に上品なサシの風味。
香り高く、それでいて必要以上に重くないサシのウマさ。
そしてミートオンザライス。
そうそうこれこれ。ウマい焼肉にウマいご飯。最高ですね。
【箸休め】
箸休めはかわいらしい牛さんのサラダ。
【名物】
後半は名物料理が続きます。
まずは大判のイチボをすき焼き風にして頂きます。こちらはサッと手際よく炙ることが肝要なので、スタッフが1枚ずつ焼いてくれます。
焼き上がりをくるくるっと丸めて溶き卵に沈めて頂きます。
甘辛いたれに卵が絡み食欲をそそる風味ですね。
名物のふた品目は「和牛赤身ロック」。
こちらもスタッフがガーリックバター醤油に何度もつけ焼きしながら仕上げます。
たれが炭火で燻されることで肉が香ばしく焼き上がります。
そしてこちらを焼肉をおいしく頂くためにブレンドされたと言う「焼肉専用米」に乗せて頂きます。
「焼肉専用米」なんて、ずいぶん大げさな、って思うじゃないですか。
いや、ぼくも実は一瞬そう思ったんですよ。
しかしひと口このご飯を頂いてびっくり。
焼肉の香りに負けない甘く華やかなご飯の香りは「焼肉専用米」を名乗るにふさわしいクオリティ。
このご飯でたらふく焼肉食べたい。
先ほどの卵を掛けてTKGバージョンも良いですね。
【焼肉】
最後は希少部位のフンドシと味噌だれのホルモンとなります。
【〆物】
この日はさっぱりとした豆乳仕立ての冷麺。
腹いっぱい焼肉を食べたはずですがスッと胃の中に収まる滋味深い味わいでした。
デザートにプリン風味のかき氷も頂き焼肉VIPコース、完成。
肉に対するこだわりに満ちたハイレベルな焼肉にこの日も大満足。
肉を喰らう楽しさを再発見できる至福の焼肉コース、焼肉好きのかたにぜひオススメしたいですね。
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・住所 東京都港区芝5-12-7
カゾール三田 1階
・電話 03-6435-2983
・備考 予約はお早めに。
・参考記事 2019年12月03日「田町 焼肉にくがとう33895 田町・三田店」
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土曜日はちょっとした用事で秋葉原へ。
ちょうど昼どきだったので、少し足を延ばして上野広小路まで昼食に出かけたのでした。
ぼくのなかで上野広小路グルメと言えばまずはとんかつ。
ぼくはとんかつと言う料理が大好きなのですが、その原点とも言えるとんかつ屋さんが上野広小路の「井泉」。
亡くなったぼくの父親もとんかつが好きだったのですが、その父親が連れて行ってくれたのが「井泉」だったのです。
とんかつ自体の味わいもさることながら、下町の老舗情緒に溢れる店構え、店内の雰囲気、あれがいいんですよね。
そしてとんかつ好きの父親が良く言っていたのが、御徒町には「井泉」のほかに「蓬莱屋」と言うとんかつ屋があって、ちょっと高いんだけどそこのひれかつもウマいんだよな、と言うことでした。
そのことばがずっと印象に残っていて、「蓬莱屋」にもいつか行きたいいつか行きたいと思ってはいたのですが、上野広小路に来るとついつい足は「井泉」のほうに向かってしまって、結局ずっと行けずじまいだったのです。
そしてようやくこの日は意を決して「蓬莱屋」へ。
それにしてもどうですこの店構え。昭和の風景って感じがたまりません。
そう言えば映画監督の小津安二郎氏も「蓬莱屋」のファンだったそうですが、いかにも小津安二郎氏が好みそうな風景です。
暖簾をくぐり引き戸を開けるとそこはすぐ鉤の手になったカウンター席。こぢんまりした店内です。
13時過ぎですが土曜日のせいでしょうか、かなりの混み具合です。
お品書きはいたってシンプルで、ひれかつ(3,300円・税込)、一口かつ(3,300円・税込)、串かつ(2,200円・税込)、そして一口かつと串かつを御膳にした「東京物語御膳」(2,800円・税込)の4種類。
お品書きにロースかつが無いとんかつ屋さん、珍しいですよね。
なにせ初訪問ですから、やはり看板メニューから行くべきですよね。
「蓬莱屋」のとんかつは低温の油でゆっくり揚げていくタイプ。なので、注文してから少し待つことになります。
老舗のカウンターでのんびりととんかつの揚がりを待つのもなかなか乙な時間です。
待つこと20分くらいでしょうか、ついにひれかつとご対面。低温で揚げられていますが、いちど高温で衣に焼き色を付けていますので、思いのほかカラリとした衣です。
肉質自体はひれと言うこともありますが、主張が無く非常にあっさりとした味わいです。
ジューシーではありますが、豚肉ならではの力強さ、香りと言った点ではちょっと物足りなさを感じるかもしれません。
しかし、衣が薄づきであることも相まって、とんかつ自体の印象はとにかく軽やか。
かなりのご高齢のご夫妻もカウンターでひれかつを楽しんでいらっしゃいましたが、このひれかつなら確かに油の重さをまったく感じません。
そしてひとつ付け加えたいのがご飯と味噌汁のウマさ。
ご飯はひと粒ひと粒が立っていてぼく好みの炊き加減。
最近は炭水化物を減らしているのでお代わりはご法度と自分に言い聞かせているのですが、この日は禁を破ってお代わりを頂いてしまいました。
味噌汁も味噌の香りが良く実に上等。
とんかつに3,300円、高いと言えば高いのですが、老舗ならではの空気感、雰囲気も含めた値付けと捉えるならば納得感は有ります。
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・店名 蓬莱屋
・住所 東京都台東区上野3-28-5
・電話 03-3831-5783
・備考 特になし。
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この日は忘年会第1弾と言うことでグルメな友人たちとちょっと豪華なランチを食べに出かけたのでした。
麻布の実力派フレンチ「ラ・リューン」。
「銀座はち巻岡田の鮟鱇鍋を食べないと冬が来ない」と書いたのは直木賞作家で食通の山口瞳氏でしたが、ぼくの友人は「ラ・リューンのジビエを食べないと冬が来ない」と言います。
そう言えば前回「ラ・リューン」を訪問したのも冬でした。
ランチはmenuA(4,950円)とmenuB(7,700円)の2種類なのですが、この日はmenuBをベースとして、前菜にシェフのスペシャリテ、メインディッシュにジビエを入れて少しカスタマイズして頂きました。
前菜の前に「突出し」と紹介されたのがこちら。箸で頂きます。
わかさぎのフリット、イタリアのサラミ、ピクルスとパルミジャーノレッジャーノ。
これ、呑兵衛にはたまらないセット(笑)。
前菜のひと皿目は本来はmenuBには入っていない永田敬一郎シェフのスペシャリテ。
魚介と野菜、コンソメジュレと言うコンビネーションはほかのレストランでも見かけますが、こちらでは茄子を使っているところがユニークですね。
雲丹の濃厚な甘さと優しいカボチャの甘さ。そしてすっきりと味を引き締めるライムの酸味。
いつ頂いてもスペシャリテと呼ぶにふさわしい完成度に感心します。
次のひと皿目が本来はコースのひと皿目の前菜。
赤で統一された鮮やかな色彩に目を奪われるひと皿、艶やかなジュレに透けて見えるのは牡丹海老。
牡丹海老の持つ素材の甘さとビーツの淡い甘さ、そしてフランボワーズの華やかな香りのコンビネーションがユニーク。
可憐なビジュアルのひと皿の次は一転してクラシカルな趣の有るフォアグラのポワレ。
シードルビネガーの爽やかな酸味がフォアグラの重量感ある風味と栗の滋味深い甘さを引き立たせます。
そしてお待ちかねの肉料理。
menuBの本来の肉料理は岩手産の短角牛のポワレ。
そちらも捨てがたいのですが、本日はジビエに変更しました。
「ラ・リューンのジビエを食べないと冬が来ない」ですからね(笑)。
この日の蝦夷鹿のポワレには「シンタマ(芯玉)」と呼ばれるもも肉の部位が使われていました。
そして蝦夷鹿の上には牡蠣、ピエブルー(紫しめじ)、タルティーボと言うコンビネーション。
蝦夷鹿のシンタマはしっとりと繊細な食感でした。
味わいもあっさりすっきりとしたものなので、ジビエらしい力強さを期待すると肩すかしを喰らいますが、先入観なく頂くのであれば実に上品で洗練された味わいを楽しむことができます。
ソースは鹿肉には定番の、胡椒の風味を効かせたポワブラードですが、そこにはふんだんにトリュフが投入されていてリッチな風味を加えています。
充実したランチの最後を飾るデセールがこちら。
このモンブランが絶品でした。
正直、モンブランってそんなに好んで頂くガトーではないのです。栗のペーストがもそもそしていたり、甘さが重すぎたり、モンブラン全般にあまり洗練された印象を持っていなかったのがその理由です。
しかしこのモンブランの完成度には脱帽。
滑らかで栗の風味をしっかりと残しながらもスッキリとした甘さに抑えられたマロンペーストに、軽やかなメレンゲ。かように洗練されたモンブラン、初めて頂きました。
すばらしいコースに本日も大満足でした。
ひと皿ひと皿の料理から食材に対する深い洞察が感じられる点も「ラ・リューン」の美点でしょうか。
一例を挙げると、たとえば牡丹海老を使った前菜。
単にビジュアルのインパクトを狙って赤い素材を組み合せているのではなく、そこには同色系統の食材同士は相性が良いのではないか、と言う永田敬一郎シェフ独自のインサイトが込められているそうです。
確かな技術に裏付けられた芳醇な味わいが楽しめる麻布の佳店です。
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・店名 ラ・リューン
・住所 東京都港区東麻布2-26-16
・電話 03-3589-2005
・備考 麻布の良心。
・参考記事 2020年12月21日「東麻布 ラ・リューン」
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この日は丸の内でちょっとした買物を済ませてから、人づてに評判を聞いて行ってみたかったスリランカ料理レストランを訪問。
訪れたのは五反田。
五反田駅西口を出て、目黒川に沿って目黒方面へ。
「ミート矢澤」の前を通り過ぎて首都高目黒線にぶつかって右折すると、鼻腔をくすぐる異国の香り。
看板を確認するまでもなく、ここがお目当のレストランであることがわかりました。
看板には「スリランカ食堂」、「Maido ohkini Sri Lanka Syokudou」と書かれていますが、正式な店名は「アラリヤランカ」と言います。
店頭にメニューが貼り出されていたので入店前にチェック。
お。これこれ。「ランプライス」。
今日の目的はこの「ランプライス」なる料理を頂くことなのです。
ランプライスの前にひと品。
スリランカ風チョップドサラダと言った趣のサラダです。
シンプルですがほどよくスパイスの風味がアクセントになっていてなかなか良いです。
ただ思いっきり生の玉ねぎが投入されているので、玉ねぎの辛味で胃がひりひりします。
そしてこちらが「ランプライス」。です。
そもそも「ランプライス」とはなんぞや?と言う話なんですが、「ランプライス」は「Lamprais」と綴り、Wikipediaを読みますとこのように書かれています。
Lamprais (English: Lumprice) is a Sri Lankan dish that was introduced by the country's Dutch Burgher population.
Lamprais is an Anglicised derivative of the Dutch word lomprijst, which loosely translated means a packet or lump of rice.
ランプライス(英語:Lumprice)は、スリランカの料理で、オランダ人のバーグラー族が広めたものです。
ランプライスは、オランダ語の「lomprijst」を英語化したもので、大まかには「米の包み」という意味です。(DeepLにて翻訳)
インターネットで検索しますとどうやらスリランカに古来から伝わる料理ではなく、スリランカがオランダの植民地であった16世紀ごろに生まれた料理のようですね。
伝統的なレシピですと、ビーフ、ポーク、チキンの3種類の肉のカレー、野菜、ゆでたまごなどをライスとともにバナナの葉で包みオーブンで熱して食べるようですが、現代では肉が1種類になっていたりとさまざまなアレンジがなされているみたいです。
熱々のバナナリーフを開梱するとこんな感じ。
湯気とともに立ち上るバナナリーフの香り、スパイスの香り、ココナッツの香り。
イエローライスの上には具材がたっぷり。
チキン、ココナッツサンボール(ココナッツを使ったふりかけ)、ナスモージュ(玉葱の煮込み)、じゃがいものスパイス炒め、そして真ん中にゆでたまご。
とにかくライスも、ひとつひとつの具材もみんなたっぷり。
果たしてこれはひとりで平らげるべきボリュームなのか一瞬悩みましたが、ウマいのですべて頂きました。
ちなみにいちばん気に入ったのはじゃがいもでした。これだけ単品で欲しいくらい。
けっこうなボリュームをひとりで頂いてしまったのですが、油分の少なさと程よいスパイス感のおかげでしょうか、さらっと食べられて、後から胃にもたれる感じもしません。
ランプライス、初めて頂きましたが、ちょっと癖になりそうな味わいでした。
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・店名 アラリヤランカ
・住所 東京都品川区西五反田2-12-15
五反田リーラハイタウン 1階
・電話 03-6885-5851
・備考 特になし。
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この日はちょっとした記念でたまには豪勢なランチを食べようと言うことになったのです。
食事のあとは新宿に用事があり、そのため新宿付近でレストランを探したのですが、これが意外に難問。
そう言えば「ミッシェル・トロワグロ」があるじゃん。と思って調べてみたらなんと一昨年末に閉店しちゃっていたのですね。残念。
そうだ、新宿に限定するから選択肢が少ないんだな。代々木まで候補を広げると…あるじゃないですか。
あの名店が。
そんなわけで訪問したのは「レストランキノシタ」。
ずっと前からいちどは訪問したいと思っていたのですが、代々木と言うロケーションがぼくの行動範囲から外れていることや、人気のあまり予約が取りづらいこと、あと、木下和彦シェフ、ちょっと怖そうだし…って感じで、この日まで訪問がかなわなかったレストランです。
ランチは2,500円、4,000円、5,300円、そして8,500円と4種類のコースとなります。
この日はちょっとしたお祝いですし、せっかくなので8,500円のMenu Cをチョイスしてみました。
アミューズは烏賊と米と使ったコロッケ。
フレンチの前菜でこの「アツアツ感」。新鮮ですね。
いきなりのジャブにコースへの期待が高まります。
前菜のトップを飾るのは北海道産のオイスター。
オイスターの身の下にはオイスターを使ったクリームを敷き詰め、海水のジュレを掛けてあります。
こちらはフランス産の兎、フォアグラ、プラムを使ったテリーヌ。
兎の肉の食感、そして滑らかなフォアグラの食感。対比が鮮やかです。
プラムのふくよかな甘さもアクセントとして効いています。
これ、とても好きなタイプの前菜です。
蛸の名産地と言えば西は明石、東は佐島。
こちらは神奈川県横須賀市の佐島の蛸を使ったひと品。
ちゃんと自分の店で蛸を茹で上げるような鮨屋(だいたいは高級店ですよね)で蛸を頂くと、蛸自体の持つ味わいの濃さに驚くことがあります。
この蛸も蛸自体の味わいの深みに驚きます。
アスパラガスやブロッコリなどのみずみずしい味わいと香りにバジルの芳香が絡み合い鮮烈な印象を残すひと皿です。
そしてブーダンノワール。
ひさしぶりにブーダンノワールを頂きました。
ブーダンノワールはフランスの伝統的なシャルキュトリの一種で、豚の血を使ったソーセージです。
豚の血と聞くとちょっと身構えてしまいますが、上手に作られたブーダンノワールは癖なくそれでいてコクのある味わいを持っています。
近年は豚の血の流通量も少ないらしく「レストランキノシタ」ではフランスから取り寄せたものを使っているとのことでした。
もともとは屠った豚をあますところなく利用しようと言う生活の知恵、と言った類の料理だと思うのですが、こうなるともはや高級料理、珍味の趣ですね。
こころして頂きましょう(笑)。
「レストランキノシタ」のブーダンノワールはパイ包みにし、定番のりんごのピュレに軽くシナモンを振って添えてあります。そしてガルニチュールには洋梨と柿。
ブーダンノワールのコクに果実の甘みが絡み合い、濃厚でどっしりとした風味です。
とても洗練されたブーダンノワール。
次の料理は魚介を使ったひと皿。なのですが、一般的なフレンチのフルコースのポワソンとはだいぶ趣の違うスタイルです。
ご覧の通り、意表を突くパスタ仕立てのポワソン。
いくらや甘海老、雲丹などの魚介をふんだんにあしらったカッペリーニは、魚介自体のウマさがシンプルにストレートに表現されたさわやかなひと皿。
濃厚なブーダンノワールからの、この落差。でも、単にひとを驚かせるだけではなく、ちゃんと料理としてウマいのだから始末に負えない(笑)。
フレンチの文法からしたら「破格」となりそうな料理ですが、この自由さも「レストランキノシタ」の大きな魅力なのでしょうね、きっと。
そして肉料理は蝦夷鹿ロースのロースト。
予約の際に、おまかせであってもメインディッシュについては好みを聞いて食材をアレンジして頂けると聞いていたのですが、当日食材を確認したところ蝦夷鹿とのこと。
ぼくも、この日の同行者も鹿は大好物。一も二もなくここはもう、蝦夷鹿一択ですよね。
この時期の鹿だからでしょうか、それとも部位のせいでしょうか、ひと口頂いてその味わいの爽やかさにびっくり。
鹿は冬にウマいと言うイメージだったのですが、この時期の鹿がこれほどまでにウマいとは。
ぼく自身は夏鹿はあまり食した記憶がないのですが、鹿好きの同行者曰く、味わいは夏鹿のそれと申しておりました。
濃厚なブーダンノワール〜爽やかな魚介のカッペリーニと言う、振れ幅の大きなコースの流れを、格調高い肉料理でしっかりとフレンチの王道に戻すあたり、手練れの木下和彦シェフの面目躍如と言ったところでしょうか。
実に良いメインディッシュでした。
上等なメインディッシュの余韻に浸りながら頂くアヴァンデセールは洋梨とカシスのグラニテ。
デセールはフォンダンショコラとピスターシュのアイスクリーム。
リッチなショコラの味わいで至福のランチは完成。
フレンチってぼくたち日本人にとっては「ハレの日」のための料理と言う面が大きいですよね。
ですから、ビジュアルの美しさだったり、驚きのあるプレゼンテーションだっとりと言う要素ももちろん大切なのですが、やはり料理の本質は食べてナンボだと思うのです。
ビジュアルの洗練と、頂いたときのしっかりとした力感。その両面があってこそのフレンチの楽しさだとぼくは思うのです。
初訪問の「レストランキノシタ」の料理は、ひと皿ひと皿の輪郭の太さと香りの高さが印象的で、フレンチを頂く楽しさに満ちていました。
充実のすばらしいランチでした。
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・店名 レストランキノシタ
・住所 東京都渋谷区代々木3-37-1
エステートビル 1階
・電話 03-3376-5336
・備考 特になし。
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先日の「荒木町たつや」に続き本格的な外食第2弾と言うことで、この夜は大崎へ。
訪問したのは「レストラン アロム」。
住所は品川区北品川。大崎駅から目黒川を渡り御殿山のふもとあたり、といったエリアです。
ガラス張りのファサードからは美しくワインボトルがディスプレイされたウォークインワインセラーが見え、とてもスタイリッシュな印象を受けますが、扉の横の飾り窓にはなぜかデザイン性皆無のフォントで「レストラン アロム」と印刷された「額」が掲げられています。
あとで知ったのですがワインセラー部はワインのインポータである株式会社ヴィノラムが経営するワインショップ「アロムヴェール」で、レストランはこのセラーを通った奥のスペース。
店舗の外には「アロムヴェール」の看板しか有りませんので、レストランの入口がわかりづらいゆえの「額」なんでしょうけど、それにしても、ねえ。
「レストラン アロム」はもともと神楽坂に有ったフレンチレストランで、経営母体は株式会社ヴィノラム。
この大崎の現在の店舗には2年ほど前に移転されたとのこと。
この大崎の店舗の場所には同じく株式会社ヴィノラムが経営する「ラ・クール・ド・コンマ」と言うフレンチレストランがあり、両者が入れ替わるかたちで移転したと言うわけですね。
ファサードは妙な「額」以外はスタイリッシュですが、インテリアはファミレスライクで(これはどうか毒舌と思わないで頂きたい。このレストランを訪問した別のかたのブログにもそのように書かれていました)、椅子についてはもしかしたらファミレスのほうが掛け心地が良いかもしれないってくらいの代物。
長時間腰掛けることになるのですから、飲食店にとって椅子ってとっても大事だと思うのですが、椅子のチョイスに手抜き、コストダウンが見えると残念な気持ちになります。
高けりゃ良いってものではないのですが、往々にして安モノの椅子は臀部から大腿部の面圧が適切に分散されず血行が悪くなったり腰に負担が掛かったりするのです。
…なんの話でしたっけ?
そうそう「レストラン アロム」のお話でした。
ぼくにとってはこの日が初訪問だったのですが、訪問前にちょっとインターネットで検索して驚いたのです。と言うのも、この「レストラン アロム」の支配人は岡部一己氏ではありませんか。
岡部氏の名前はフレンチ好きのかたなら一度や二度は聞いたことが有るかと思います。麹町の名店「オー グー ドゥ ジュール」のオーナにして支配人だったかた。日本一のサービスなんて言われていたかたですね。
しかしぼくは過去にちょっと因縁がありまして、もう20年近くも前のことですが、氏に直々にクレームをつけたことがあったのです。
その夜はぼくにとっては大事なお客様をもてなす席で、たしか「オー グー ドゥ ジュール」の初訪問日だったと記憶しています。
しかしその日は岡部氏にとってはもっと大事であろう常連客らしきテーブルがあり、かつ、ぼくたちのテーブルは割と下戸なメンバーが集まってしまったり(これはぼくのリサーチミスで、下戸なメンバーが多かったらもっと別のレストランのチョイスをすべきだったと思います)、そのうちのひとりが大遅刻すると言うアクシデントがあったりとして、氏としてもサービスするに値する客では無いと思われたのでしょう、ぼくたちのテーブルはほとんどほったらかされ、料理の説明も無く、まあまあヒドい扱いを受けたのでした。
で、翌日ぼくは氏に電話を掛け、30分ほどもネチネチとクレームを入れたのです。
確か「日本一のサービスだかなんだか知らねーけど天狗になってんだろ。初心を思い出したほうがいいぞ」みたいなことを言った記憶があります。
思い返すとぼくもまあまあヒドいこと言ってますよね(笑)。
だいぶイヤな感じだったと思います。
氏としてはおそらく、こいつメンドくさいから謝らないと何時間でも電話切らないぞ、と思ったのでしょうね、内心どう思われたかは知りませんが、いちおう形式上は謝罪してくれたので、ぼくもこの件については水に流すことにして、その後は日本橋の支店「オー グー ドゥ ジュール メルヴェイユ」をしばしば訪問したりしたものでした。
日本橋の「オー グー ドゥ ジュール メルヴェイユ」は現在「ラペ」の松本シェフが作る料理のクオリティが素晴らしく、とても良いレストランでした。
…とても良いレストラン「でした」?
そうなんです。
その後「オー グー ドゥ ジュール」グループは新丸ビルに支店を出したりと飛ぶ鳥も落とす勢いで業容を拡大していったのですが、吉兆創業者の湯木貞一氏の「料理屋と屏風は広げすぎると倒れる」と言うヤツでしょうか、2016年に経営破綻してしまいました(そのあたりの経緯はこちらに詳しく書かれています)。
そんな思い出のある岡部氏ですが、お目に掛かるのは実に十数年ぶり。
氏もいろいろたいへんな時期があったようですがお元気そうで安心しました。
この夜は全6品にワインがペアリングされた8,910円のディナーを頂きました。
まずはこちらから。
こちらはパルメザンチーズをクレームブリュレ風に仕立てたアミューズ。
パリッとカラメリゼされた表面をスプーンで割ると滑らかなテクスチャのチーズのクリーム。
鮮やかなジュレの赤はビーツの色。
ジュレの下には帆立貝と「リゾーニ」と言う米のような形をしたパスタ。ジュレに添えられたディルの香りのサワークリームがちょっとしたアクセントになっています。
イメージは「冷たいボルシチ」なんだそうです。
ビジュアル的にも楽しい前菜ですね。
「パンプ金時」と言うさつま芋を使ったポタージュ。
アクセントにはシナモンの香り。
メインディッシュのひと品目は明石産の真鯛をポワレに。ガルニチュールはまこもだけとロマネスコ。
しっとりと仕上げられた身には真鯛らしい味わいが上手に閉じ込めらていて、皮目の香ばしさと相まってこの真鯛のポワレはなかなかに上等なひと品でした。
肉のメインディッシュはフランス産の鴨胸肉のロースト。
こちらも上質なメインディッシュでしたが、鴨自体に関してはもう少し鴨らしい肉の力感が感じられると嬉しいですね。もっともこれは鴨の時季的な問題が大きな要因と思われますので、シェフの力量に帰すべき問題ではありません。
全体的には過不足なく上等に仕上げられていて満足感の高い料理でした。
スープ仕立ての滑らかなプディング。カラメルの部分はソルベに仕立ててあるのがおもしろいですね。大人が楽しめるプディングです。
料理はいずれも端正に仕上げられ、これ見よがしのギミックなどはありませんが素材の持ち味を活かし実直に仕立てられた味わいは好ましいものでした。
料理のクオリティが上々だっただけに、ちょっと店舗の雰囲気がチープなところが惜しまれます。もちろん、逆のパターン、雰囲気は良いけど料理がダメ、ってヤツよりはるかに良いですけどね(笑)。
ワインは併設のワインショップの「店頭価格+コーキッジ料(抜栓料)」で楽しむことができますので、ワイン好きなかたにはオススメです。
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・店名 レストラン アロム
・住所 東京都品川区北品川5-6-1
大崎ブライトタワー 1階
・電話 050-5487-3210
・備考 特になし。
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ようやく緊急事態宣言も明け、ほんとうにひさしぶりに友人たちと外食に出掛けたのでした。
向かったのは荒木町。
駅で言いますと曙橋と四谷三丁目の間に位置するあたりですね。
自動車がひしめきあう新宿通りから坂を下ればそこは無数の看板に明りが灯る酒と料理の街。かつては花街だったと言う風情をそこはかとなく感じる、趣のある街並みです。
この日訪れたのは初訪問となる「荒木町たつや」。
8席のカウンター席は予約で数ヶ月先まで埋まっていると言うプラチナシート。
ぼくも人並みにいわゆる予約困難店などと呼ばれる飲食店に行ってみたいと言う気持ちは有るのですが、なにせ根がものぐさなものですから、実際に電話を掛けまくったり予約のためだけに店を訪問したり、と言った行動がなかなかできません。
この日もグルメな友人がだいぶ前に予約してくれていたお席におじゃましたのでした。ありがたや。
「荒木町たつや」は2021年のミシュランガイドでも一つ星を獲得。
こちとらミシュランガイドに掲載されたからと言って訪問の際に気負うことはありませんが、ご主人の石山竜也氏がかの名店「神楽坂石かわ」一派の出身との事前情報に襟を正す思いで暖簾をくぐったのでした。
先付は毛蟹と「みず」。
「みず」は秋田で好んで食される山菜のひとつ。
しゃきしゃきした食感が食欲を呼び覚ましますね。
秋刀魚の春巻とウドの花。
春巻の半分は秋刀魚と松茸、半分は秋刀魚と香茸と言う趣向です。
香茸もその名の通り香りの良いきのこですが、華やかさでは松茸でしょうか。
この夜の椀種は松茸と甘鯛でした。
存在感の有る大きさと素晴らしい香りの松茸、旨味をたっぷりと湛えた甘鯛に負けず印象に残る芳醇な出汁の味わいは前半の料理のハイライト。
こちらは出汁漬けにしたいくら。
お造りはくえ、焼き霜造りの鰆、真鯛。
いずれも甲乙付け難い味わいでしたが、この日は甘みのある真鯛が非常に美味でした。
焼きものは金目鯛。
繊細なお造りの味わいから一転、力強くまた香り高いひと品は鮮烈な印象を残します。
炊合せには鴨と芹、そして11種類ものきのこ。
鴨の鴨らしい味わいを引き立てるのはこちらも滋味深い出汁の風味。
そしてその滋味深いお出汁は雑炊に。
これ、お代わりしたくなります。
柿と栗を使った甘味で本日のコースは完成。
いずれの料理も素材の持ち味を最大限に活かした、繊細かつ確かな技術が伺える上質なものでした。
お会計はだいぶ良い感じで日本酒を頂いて1万円代半ば。この料理のクオリティを考えたらお値打ち価格ではないでしょうか。
四季折々に訪問したくなるような佳店ですが、予約がなかなか取れませんので次回の訪問はだいぶ先になりそうです。
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・店名 荒木町たつや
・住所 東京都新宿区荒木町10
タウンコートナナウミ 1階
・電話 03-6709-8087
・備考 予約はお早めに。
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この日は乗換えで大井町で下車。
夕飯にはちょっと早い時間帯だったのですが、昼食を食べていなかったので遅めの昼食兼早めの夕飯と言うことで大井町で食事をすることにしたのです。
区民会館「きゅりあん」の裏手にある古めかしい洋食屋さんの「プロヴァンス」にでも行こうかな、と思っていたのですが…。
あれ?
いつの間にか「たれ山」が大井町にできてますね。
「プロヴァンス」の洋食も良いけど…今日はせっかくなので「たれ山」の焼肉にしましょう、最近焼肉食べてなかったし。
「たれ山」はあの吉祥寺の「肉山」グループの焼肉レストラン。
高田馬場に最初の店舗を出店したのが2018年。その後2020年に中野店、そして2021年5月にこちらの大井町店をオープン。
名物はその店名の通り「たれ」で頂く焼肉なのですが、そのたれは醤油ベースのものではなく「味噌だれ」であるところが特徴。
看板や暖簾に「焼肉とご飯」とあるように、数十種類の食材を調合したオリジナルの味噌だれはご飯に合う味わいなのです。
まずは塩系からいってみましょう。
「たれ山」の焼きものは肉の量が半分、お値段も半分の「ハーフサイズ」が用意されていますので、ひとり焼肉の場合は便利ですね。
「上タン(塩)」はさっと炙るとすばらしく香ばしい脂の香り。
「特上ハラミ(塩)」も香り良く味わいもまずまず。だったのですが、前に高田馬場の「たれ山」で頂いた絶品のハラミと比べてしまうとハラミらしい味わいの濃さと言う面では一段二段落ちる印象でした。
後半は「たれ」系で。
「上カルビ」、「和牛リブロース」ともにたっぷりとサシが入った部位になりますが、この味噌だれと合わせると味噌の香りと脂の香りがブレンドされて、さほどサシの重さを感じなくなるのは不思議。ご飯にも良くマッチする味わいです。
肉質は前に高田馬場で頂いたときの印象より全体的にやや落ちる感じはありましたが、とは言えそれでもお会計は肉のクオリティを考えたらお安めと思います。
焼肉激戦区・大井町でいつもの焼肉とはひと味違う焼肉を楽しみたい時にオススメです。
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・店名 たれ山 大井町店
・住所 東京都品川区東大井5-17-2
野村ビル 1階
・電話 03-6433-2946
・備考 特になし。
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相も変わらずの緊急事態宣言下で外食もままならない毎日ですが、なんとか元気に生きています。
新型コロナウィルスの流行とは関係なく、ここ数年よく思っていたのですが、行きたいお店には気になったときにすぐ行くべき、なんですよね。
いつか行きたいな。と思いつつも、懐具合だったり、タイミングだったり、その他諸条件が折り合わず訪問の機会を逸したまま月日は流れ、そしてあるとき不意に目にする閉店のお知らせ。
なんとも言えない喪失感、寂寥感にとらわれることになるのです。
ましてやこのコロナ禍。こんな状況があと何ヶ月続くのか、何年続くのかぼくにはさっぱり見当が付きませんが、廃業や閉店を決意する飲食店がますます増えることは容易に想像できます。
悔いのないよう一食一食を大切にしたいものですが、20時閉店ってのはどうにかなりませんかね…。
この日は大崎で打合せを済ませたあと、この界隈の飲食店に詳しいグルメな友人が教えてくれたお店を訪問。
それがこちら。
百反通りの大崎と戸越のちょうど中間点あたりに見えてくる「焼いた餃子と白いめし」と書かれた看板が目印の「餃子とめしの包琳(ぱおりん)」。
実はこの場所、つけ麺好きなら知らない者はいないであろう有名店「六厘舎」の旧本店跡地。
「餃子とめしの包琳」は「六厘舎」の経営母体である株式会社松富士食品が手がける新業態店なのです。
これはぼくの独断と偏見に基づく勝手な意見なのですが、ウマい餃子を喰わせてくれるお店はだいたいメニューがシンプルなのですよ。
具材違いでさまざまな餃子をラインナップさせているお店、有りますが、そのような店でウマい餃子に当たったためしがありません。
で、「餃子とめしの包琳」のメニューですよ。
こちらのメニューはいたってシンプル。
餃子。豚汁。ライス。
そしてそれらをセットにした餃子定食。
以上。
うんうん、良いじゃないこのシンプルさ。
この日頂いたのはこちら。
餃子の形状は焼き餃子で良く見かける三日月型ではなく、ぱっと見焼き小籠包のような丸みを帯びています。
まずはひと口。
お、これ、なかなかウマいですね。
具材はオーソドックスですが、それぞれの具材のバランスが良く吟味されていることがわかります。
特に香味野菜のバランスが良いですね。最初ににんにくとにらが香り、その後でピリッと生姜が後味を締めます。
個人的には焼き餃子は底面はパリッと焼けていて、側面はもっちり感が有って、と言うそのコントラストがはっきりしているほうが好みなのですが、「餃子とめしの包琳」の餃子はこのような形状ゆえ「揚げ焼き」のように少し多めの油で焼きを入れていると思われ、側面まで強めの焼き色が着いています。
そのようなわけで皮については油分が強めに感じられますので、12個頂くと腹にずっしりくる感じです。
無料でにんにくを付けてくれますので、お好みで「追いにんにく」もアリですね。
テイクアウトは8個で480円とお手頃価格。
ビニール袋に厳重に封入して冷蔵庫に保管したつもりだったのですが、それでも冷蔵庫のなかがかぐわしい香りでいっぱいになりました(笑)。
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・店名 餃子とめしの包琳(ぱおりん)
・住所 東京都品川区大崎3-14-10
・電話 03-6417-3661
・備考 特になし。
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先日、例のワクチンの接種を済ませてきたのですが、接種の前日、既に接種を済ませていたかたに、なにか気をつけることってあります??と軽い気持ちで訊いたところ、返ってきたのは「最後の晩餐になるかもしれないから今夜はおいしいものを食べて帰ってね(ニッコリ)」と言うナイスなアドバイス。
スティーヴ・ジョブズの有名なスピーチの中に“If you live each day as if it was your last, someday you'll most certainly be right”(毎日をそれが人生最後の一日だと思って生きれば、いつかその通りになるだろう)と言う一節がありますが、こんな時代に生きているとそのことばの重みに改めて気付かされます。
一日一日をたいせつに、一食一食をたいせつに。
忙しいとそんな気持ちをすぐに忘れてしまうんですけどね。
そんなわけで後輩に仕事を押し付け、早めにオフィスを抜け出して向かったのは日本橋室町。
「ビストロ石川亭」は神田に本店を置く人気ビストロ。
ランチタイムにはハンバーグやとんかつもあったりして、本格的なビストロにはカテゴライズできないお店かもしれませんが、お値段お安めでポーションもしっかり、と言った特徴は、本来のビストロ的な精神が色濃く現れている美点と言っても良いかと思います。
昨年までは銀座ベルビア館にも支店があり、そちらにはランチタイムに何度か訪問したことがあったのですが、こちらの店舗は初訪問。
この夜頂いたのは前菜の盛合せ、本日のスープ、4種類から選べるメインディッシュと言う構成のディナープリフィックスセット。
お値段なんと1,980円(税込)。
ランチタイムも激安・メガ盛りで有名な「ビストロ石川亭」ですが、ディナータイムのお値段にもびっくりです(スタッフのかたに確認はしなかったのですが、たぶんいまだけの特別価格と思います)。
この日の前菜は鮪のカルパッチョ、キッシュ、イベリコ豚のチョリソ、鴨のテリーヌ。
「三種盛り合わせ」と謳いながら3種類以上ありますがこう言う嘘は大歓迎。キャロットラペもカウントすると5種類かな。
鮪はおおぶりで味わいも上等、鴨を使ったテリーヌも本格的な風味でした。
飾り気はありませんが質実剛健、充実した前菜です。
スープは蒸し暑いこの時期に嬉しいヴィシソワーズ。
思いのほか野性味のあるじゃがいもの風味です。
メインディッシュは以下の4種類。
この日のぼくのチョイスはこちら。
たっぷり300g以上ありそうなポーションは大迫力のビジュアル。
豚肉自体の味わいを楽しみたいぼくにはソースの味わいがちょっと濃いめに感じましたが、ひとによってはこのポーションであっさりめの味付けだと「食べ飽きてしまう」ような印象を抱いてしまうかもしれませんので、その意味ではこのちょっと濃いめの味付け、が正解なのかもしれません。
いずれにしても日本橋の一等地にしてこのお値段。
驚きのお値打ちディナーでございました。
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・店名 ビストロ石川亭 コレド室町店
・住所 東京都中央区日本橋室町2-2-1
COREDO室町1 3階
・電話 050-5266-0366
・備考 特になし。
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昨日はちょっとした用事があり昼どきに銀座へ。
銀座界隈は仕事がらしょっちゅう通ることは通るのですが、それはたいてい平日の夜なので、昼間の銀座はひさしぶり。
ちょっとびっくりしたのはその人出の多さ。
緊急事態宣言が解除され、さらにデパートも夏のセールが始まっていたりと言うこともあるのでしょうね、だいぶひとが戻っている印象が強い日曜日の銀座です。
で、打合せを兼ねてランチと言う予定だったので、ちょっと豪勢にビステッカでも食べようかと店は目星を付けておいたのですが、残念ながら当日では予約ができず路線変更でこちらに。
「西洋料理 三笠會館GINZA 1925 三越銀座店」。
「会館」じゃないですからね、「會館」ですから。
由緒正しさ感が伝わります。
「西洋料理 三笠會館GINZA 1925 三越銀座店」は並木通りの「三笠会館 本店」(こちらの表記はなぜか「会館」なのですね)の支店。
現在ではフレンチ、イタリアン、日本料理などさまざまなジャンルの飲食店を展開する「三笠会館」グループですが、こちらの「西洋料理 三笠會館GINZA 1925 三越銀座店」の料理は創業当時の原点である「洋食」にフォーカスしたものなんだそう。
この日はスープとお好みのメインディッシュと食後の飲みものがセットになった「お好み洋食セット」(2,450円〜)を頂きました。
この日のメインディッシュは4種類。
どれもウマそうですが洋食の王道って感じの「有頭海老フライとズワイ蟹のクリームコロッケ」。
これにしておきますかね。
スープはコンソメと季節のポタージュを選ぶことができます。
蒸し暑かったので冷たいポタージュをチョイス
グリーンピースが嫌いな子どもって多いですよね。
あれって冷凍のミックスベジタブルが原因じゃないかなあ。ボソボソして食感が悪いですし、旨味が無くて豆臭さが強調されてしまうんですよね。
もちろん、こちらのポタージュは上等。実に上等。
子どもにはこう言うスープを飲んでもらってグリーンピース好きになってもらいたいものです。