この日は荒木町へ。
飲食店がひしめき合う「車力門通り」をぶらぶら下り、金丸稲荷神社の脇の細い路地を進むと見えてくるのがこちら。
「荒木町たつや」。
この夜もグルメな友人が予約してくれた「荒木町たつや」のプラチナシートにお邪魔したのでした。
ご主人の石山竜也氏がかの名店「神楽坂石かわ」一派の出身。
2017年にこの荒木町で「荒木町たつや」として独立するや瞬く間に予約が取れない人気店となってしまいました。
先付けには岩海苔で彩られた甘鯛の茶碗蒸し。
前回の訪問時に椀種として頂いた甘鯛もその味わいに感嘆した記憶が有りますが、この日の甘鯛も実に味わい深く美味。
この時点で今夜の料理への期待感が膨らみます。
蛍烏賊を使った春らしい飯蒸し。
山椒の香りが食欲を刺激します。
琵琶湖の「もろこ」と蕗の薹の天ぷら。
だいぶ前に滋賀に出かけたときに琵琶湖の鮎は頂いたことがあるのですが、琵琶湖ならではのもうひとつの名物と言える「もろこ」。こちらは初めて頂きました。
ひと口頂くと、ふんわりとした身の食感のなかに上品な味わいと香りを併せ持つ端正な味わい。
ずいぶん長く生きていますけど、まだまだ頂いたことのない食材、たくさん有りますね。
下世話な話ですが天然物の「もろこ」は流通量が少なくたいへん高級な魚で京都の一流の料亭などでしかなかなかお目に掛かれない食材のようです。
下世話な話ばかりではなんですから、食器についても。
日本料理を頂くときの楽しみのひとつである器。
器に関してはシロウトもシロウト、どシロウトなのですが、そんなぼくでもこの「もろこ」に合わせられた器の美しさには目を奪われました。
食材と器の取り合わせの妙がわかるような大人になりたいものです。
日本料理の楽しみである椀もの。
この夜の椀種は桜鱒と新わかめと蕪。
いまが旬の桜鱒は程よい脂の風味としっかりとした旨味が印象的でした。
お造りは水分をじっくりと抜いてねっとりした食感と甘さが強調されたあおり烏賊が印象的。
焼きものは鰆とアスパラガスでした。
鰆は表面の香ばしさとレアな部分のみずみずしさのコントラストが楽しめるように絶妙な火入れに仕上げられています。
そしてかいわれ大根。このかいわれ大根は近年一般的な水耕栽培ではなく昔ながらの砂耕栽培で育てられたものだそうで、ぼくの舌でその差がわかるかどうか甚だ自信が有りませんが、確かにピリッとした辛味の奥にほのかな甘さと言うか旨さが感じられ美味でした。
炊合せには猪と、その断面の美しさに思わず目を奪われる京都の筍。こちらを白味噌仕立てで頂きます。
しっかりとした食感の猪の身には野趣あふれる旨味が凝縮されていますが、その力強い旨味に負けることなく旨味をさらに引き立てるのが芳醇な白味噌の味わい。
その芳醇なお出汁で頂く雑炊。しみじみウマい。
もちろんお代りも頂きしたが、ぼくの本心を言いますと、永遠に食べ続けたい味です、これ(笑)。
甘味はマスカルポーネチーズと落花生に金柑のジャムを添えて。
この日も春の食材を存分に楽しめる素晴らしい料理の数々に大満足。
超人気店ゆえ次回の訪問はだいぶ先になってしまいそうですが、次の訪問が今から楽しみです。
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・店名 荒木町たつや
・住所 東京都新宿区荒木町10
タウンコートナナウミ 1階
・電話 03-6709-8087
・備考 予約は月初営業日の正午より電話にて受付。
・参考記事 2021年10月20日「荒木町 荒木町たつや」
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この日は大崎で用事を済ませたあとで、春風に誘われぶらりと徒歩で五反田へ。
お目当の店はこの界隈の飲食店に詳しい友人が教えてくれた、夜ごと満席になると言うイタリアン。
予約をしていなかったので、席が空いていれば滑り込もう、と言う魂胆です。
その店がこちら。
派手な看板には「ぽるこ」と店名が光り、黒板には「豚づくし」の文字。
スタッフに予約なしでも入れるか訊いてみるとちょうどタイミングよくカウンター席が空いたと言うので、さっそく入店。
「ぽるこ」(Porco)とはイタリア語の「豚」。
その店名の通り看板メニューは豚肉料理と聞いていましたので、前菜はバランスを考えて魚介系を。
なんでも値上りしちゃう今日この頃、770円なんて嬉しいじゃないですか。
ボリュームだってふたりでシェアするのに十分。
味わいもこれがまた770円と言うお値段から想像するレベルを良い意味で裏切るもの。
550円。冗談みたいなお値段です。
このサラダもボリュームたっぷり。ボリューム考えたらサイ●リヤより安いかも。
そしてゴルゴンゾーラチーズの濃厚な味わいとくるみの香ばしさが相まって味わいも本格的。
カルパッチョとサラダのふた皿を頂いただけですが、この時点で既に「ぽるこ」の人気の理由を理解したのでした。
肉料理に行く前にもうひと皿。
ソテーされた香ばしい香りと素材自体の甘さのコンビネーションが良いですね。
春らしい気分が高まるひと皿でした。
そしてお待ちかねの肉料理。
豚肉料理がウリと言う「ぽるこ」だけに、このグリルのほかにも、たとえば岩中豚のLボーンステーキだったり、イベリコ豚のグリルだったり、銘柄も調理法もバリエーション豊かでメニューのチョイスに悩んでしまいます。嬉しい楽しい悩みですね。
この夜は豚肉のウマさをストレートに楽しみたかったのでシンプルなグリルをチョイスしたのですが、このチョイス、大正解でした。
青森県の西部に位置する鰺ヶ沢町の「長谷川自然牧場」が生産する「長谷川熟成豚」は、通常より長い時間を掛けて肥育されることでより甘くより柔らかな味わいの肉質を持つそうですが、確かに頂いてみるとすっきりとした風味のなかにどっしりとした脂の甘さが感じられる上質の豚肉でした。
この日は雲丹を使った濃厚なパスタをチョイス。
これはパスタに限った話ではありませんが、頂いた料理はいずれもウマさのどストライク、って感じなんですよね。奇を衒ったりサプライズを求めたり、と言った要素はありませんが、ブレなくウマい王道の味。
日常使いするイタリアンってこう言う料理で良い…と言うか、こう言う料理が良いですね。
〆めのパスタまで頂いて腹いっぱい。
最近外食する機会がめっきり減ってしまい、こんなに腹いっぱいになるまで夕飯を食べるなんて久しぶりでした。
腹いっぱい…なのですがせっかくなのでドルチェも頂きました。
ドルチェも素朴なビジュアルなのですが、ほっこりしてしまうウマさでした。
店内が狭く席数も限られていますのでふらりと訪問するのはちょっと難しいのですが、席が空いてさえすれば躊躇なく入店することをオススメします。
今回は頂かなかったのですが内臓料理のメニューも豊富なので、次回訪問する際には試してみたいと思います。
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・店名 ぽるこ
・住所 東京都品川区東五反田2丁目9-7
ピロティ五反田 1階
・電話 03-6753-6472
・備考 特になし。
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この日は訳あって平日の田町へ。
芝浦公園の紅梅もちょうど見ごろ。もうすっかり春ですね。
平日の昼どきの田町で何を食べるか。
選択肢が多すぎて悩みます。
はたまたオシャレにプルマンのダイニングでランチってのも有りだし、一度は行ってみたい名店「リストランテ ラ チャウ」なんてのもステキだし。ランチならそこまで高くないよね?
そうだ。もう一軒、行きたい店が有ったんだ。
それがこちら。
「トンカツX」。
田町駅前の再開発の中心となる「Msb Tamachi 田町ステーションタワーN」の1階だけあって、昼どきの店内は近隣のオフィスのビジネスパーソンたちで満席、さらに5人ほどのウェイティング。
とんかつの匂いを楽しみつつ待ちましょうか。
「トンカツX」と聞いてとんかつ好き、肉好きの方ならピンと来るかもしれませんが、「トンカツX」の「X」は東京都が開発したプレミアムポーク「トウキョウX」の「X」。
「トンカツX」は「トウキョウX」を扱うミートパッカー業者である株式会社ミート・コンパニオンが経営母体と言うこともこの店に興味を持った理由なのですが、ぼくが訪問したいと思った理由はそれとは別にもうひとつ有ったのです。
それは「トンカツX」の料理が宮前平の名店「とんかつ しお田」の監修によるものと聞いたからなのです。
「とんかつ しお田」、前から一度行きたいと思っていたのですが、用事が無いとなかなか行かないエリアゆえ訪問の機会が無かったのです。
その「しお田」の味わいのエッセンスが楽しめるのではと期待したってわけです。
さて、この日の料理ですが…。
ランチタイムの主力は「トウキョウX」ではなく「弓豚SPF」を使った定食。
ランチタイムでも「トウキョウX」を使ったとんかつをオーダできるらしいのですが、そのお値段は4,000円ほど。
率直に申し上げますと、とんかつに4,000円、ぼくにはちょっと高いように感じます。
とんかつってぼくにとっては手軽に食べられるちょっとしたごちそうと言うポジションなんですね。
それこそ4,000円出すなら「ラ チャウ」でランチコースが食べられてお釣りが来ちゃうし(誤解なきように申し添えますと、ぼくは料理に貴賎なしと信じていて、イタリアンがエラくてとんかつがエラくないなんて言うつもりはまったくありませんよ)。
そんなわけで、ぼくのチョイスはこちら。
200グラムのトンカツは厚みこそ標準的ですが、そのぶん面積的にはなかなかのインパクト。
断面はこんな感じ。
肉質は…うーん。ご覧頂いた通り。ちょっと期待はずれかな。
それよりも気になったのは衣。
ザクザクっとした力強さは好みなのですが、まず油切れが悪くて重たすぎる。そして箸で持ち上げようとすると衣がぽろぽろと剥がれてしまいます。
訪問したあとで某大手グルメサイトでレビューを読んだのですが、多くのかたがこの衣の剥がれは指摘されていますね。
揚げ油には「トウキョウX」のラードも使われているとのことで、その力強い香りが最初のひと切れ、ふた切れくらいは好ましく感じるのですが、いかんせん油をじっとりと吸い込んだ重たい衣のとんかつを食べているとその香りがトゥーマッチになってきます。
残念ながら「とんかつ しお田」監修の恩恵はあまり感じられず、お値段なりの満足感は得られず、でした。
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・店名 トンカツX
・住所 東京都東京都港区芝浦3-1-1
msb Tamachi 田町ステーションタワーN 1階
・電話 03-6435-2904
・備考 特になし。
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この日は麻布に所用があり、ちょうど昼どきだったので麻布十番で昼食を頂くことにしたのです。
新一の橋交差点で悩むことしばし。
どちらも悪くない。実に悪くない。
いやしかし、そう言えば目の前にある「麻布永坂 更科本店」。
この前を何百回も通っているけど、一度も暖簾をくぐったことがなかったのでした。
たまにはさっぱりと蕎麦なんてのも悪くないですね。
入口には英語のメニューもあったりして。
さすがインターナショナルタウンのアザブジュバーン。
「ざる」には"Oseiro garnished with roasted, shredded laver to bring out the flavor"って書いてあります。
「海苔」って"lavor"と言うのですね。
非常にややこしいのですが、麻布十番には「更科」を名乗る蕎麦屋が3軒あります。
「総本家」やら「本店」やら、どれが本家なのか、どれが正統なのか、訳がわかりませんね。
麻布十番にある「更科」の始祖は江戸時代に麻布永坂で堀井清助と言うひとが興した「信州更科蕎麦所 布屋太兵衛」なのですが、こちらは昭和初期にいちど廃業。
戦後の昭和23年にまず「1」が「永坂更科本店」と言う店名で馬場繁太郎と言うかたの手により開業。
昭和24年には「2」が「麻布永坂更科 総本店」と言う店名で堀井家により開業。
この「1」と「2」の間で商号の使用権について訴訟となったりしたのちに、堀井家の八代目となる堀井良造により昭和59年に開業したのが「3」。
こちらは「信州更科 布屋総本家」と言う名称でしたが、「布屋」の名称の使用可否について訴訟となり、現在は「総本家 更科堀井」と言う名称となっています。
この3店舗のうち、ぼくがガキのころから通っていたのが「2」の「永坂更科 布屋太兵衛」で、いちばん馴染みが有るのですが、最近はちょっとその味わいが落ちているような気がします。
「3」の「総本家 更科堀井」も数回訪問したことがありまして、蕎麦のクオリティ的には」こちらのほうが断然良かった記憶が有ります。
で、この日訪れたのが初訪問となる「1」の「麻布永坂 更科本店」って訳です。
この日は天ぷらと蕎麦を頂くことにしました
天ぷらと蕎麦の組合せは4種類有ります。
日本語のお品書きにはいっさい解説が有りませんので、英語版のメニューから転載しますと…。
「もり」:
"Machine-cut soba noodles"
「せいろ」:
"Soba noodles freshly hand-cut each day by our expert chefs"
「御膳」:
"Snow-white, thin-cut soba noodles made using refined buckwheat"
「ざる」:
"Oseiro garnished with roasted, shredded laver to bring out the flavor”
「御膳蕎麦」(他店では「御前蕎麦」と表記)は、蕎麦の実の甘皮を取り除き、中心部分からごくわずかに採れる御前粉を使用した蕎麦。こちらが更科系の蕎麦の代名詞でしょうか。
上品ではありますが蕎麦らしい香りと言う面で劣りますので、あえて「御膳」を外して「せいろ」を頂きました。
蕎麦の前に熱々の天ぷらを頂きましょうか。
なかなかの大きさの海老が2尾。
海老はレア感を残したちょうど良い頃合いの揚がり具合。
そのあたりは良いのですが、衣がいわゆる「花揚げ」なので、ちょっと衣の存在感が強すぎるような気がします。もちろん天丼などで頂くならこれで良いのですが。
蕎麦はさほど主張が強い部類ではありませんが、コシの強さが印象に残ります。
このハリの有る食感、けっこう好きです。
喉ごしもよく、風味もまずまず。
老舗らしく手堅く安心感有る味わいでしょうか。
お値段は2,500円オーバとちょっとお高い印象もありますが、麻布十番と言う場所を考えればまあまあ納得感の有るお会計でしょうか。
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・店名 麻布永坂 更科本店
・住所 東京都港区麻布十番1-2-7
ラフィネ麻布十番 1階
・電話 03-3584-9410
・備考 特になし。
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本日は29…にくの日にふさわしいブログでもいってみましょうか。
昨年2021年10月にオープンするや、マスコミなどでも大々的に取り上げられて一瞬で予約の取れないレストランになってしまった「ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京」。
生来のあまのじゃくなので、話題のレストラン、下世話な言い方ですと「いま行っておくとちょっと自慢できるレストラン」みたいな店に行くことは稀で、この「ピーター・ルーガー」もぼく的には縁遠いレストランだと思っていたのですが、自粛生活であまりにもやることが無かったので、ついついホームページの予約システムを確認してしまったのです。
噂通り数ヶ月先まですべてのテーブルが埋まっているのを確認して一度はそっとホームページを閉じたのですが、日を改めて何度かチャレンジすると、瞬間的にポツポツとキャンセルが出ていることを発見。
そりゃ、数ヶ月先の予約日なんて、どんなスケジュールが被るかわからないもんねえ。
そんなわけで思ったより早めに予約が取れてしまったので、この日は仕事もきっかり18時で切上げ恵比寿に向かったのでした。
恵比寿駅東口から動く歩道で恵比寿ガーデンプレイス方面に出て、日仏会館方面に歩くと…お!見えてきましたピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京。
ここ、もともとは「MLB café TOKYO 恵比寿店」が有った場所ですね。
外観はもともとの建物に少し手直しした程度ですが、なかなかゴージャスで雰囲気が有ります。
こんな異国情緒のある建物が街並みに違和感なく溶け込んでいるところはさすが恵比寿。
初心者なのでエントランスを間違えました。
道路に面しているこちらの出入口はショップの入口でした。
レストランのエントランスは中庭に面したこちらでした。
うーん、素敵。
レストラン好き、にく好きのかたには説明不要と思いますがピーター・ルーガーはニューヨーク、マンハッタンで130年の歴史を誇る老舗ステーキハウス。
その超名門ステーキハウスが初の海外出店に選んだのがここ東京。なんだそうです。
ちなみに日本での運営会社は「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」などで知られる株式会社ワンダーテーブルです。
ぼくたちが案内されたメインダイニングは2階。
メインダイニングの天井は3階まで吹き抜けになっていて、その3階は2階のダイニングを見下ろせる「劇場型」のレイアウト。非日常感の有る素晴らしい空間です。
細かいことですが椅子の掛け心地も素晴らしい。
ステーキハウスの定番と言えばサーロインとフィレを両方楽しめる骨つきのステーキ、いわゆる「Tボーンステーキ」ってやつですよね。
このTボーンステーキと言うスタイルをアメリカで最初に広めたのがピーター・ルーガー。
ピーター・ルーガーのTボーンステーキはひとり当たりのボリュームを約300gとして3種類の大きさから選ぶことができます。
ひとり当たりのお値段に換算しますと…。
となります。どれを選んでもそんなに変わらないですね。
天下のピーター・ルーガーでこんなみみっちい計算をしているのはぼくくらいだと思いますが(笑)。
Tボーンステーキですとサーロインとフィレ、赤身がちの部位になりますが、もう少しパワフルな部位ですと「リブアイステーキ」も用意されていて、こちらはだいたい500gで18,000円。
この日はボリュームもまあまあ行ける男子4人組での訪問だったので「Steak for Three」と「Rib Steak」と言うコンビネーションで攻めることにしました。
900g+500g=1,400g。ひとり当たり350gと言う計算です。
ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京のメニューはニューヨークの本店のものに忠実に倣っていて、前菜のラインナップはシンプル。
サラダ類、ジャンボシュリンプカクテル、ラムチョップと言ったところでしょうか。今回はステーキをおいしく頂くために前菜はあっさりめで。
ボリュームは4名でシェアしてもたっぷり。
酸味の強いはっきりとした味わいです。
シーザーサラダを食べ終えるや否やすぐに香ばしい香りと共にメインディッシュが登場。
サイドディッシュは2種類。
ピーター・ルーガーのステーキはいちどブロイラーと呼ばれる直火オーブンに入れて500度の高温で外側をしっかり焼き、その後肉をカットし溶かしたバターと共に皿に乗せたまま再びブロイラーに入れ、数分間焼いた後にその皿でテーブルにサーブされます。なので、皿の縁まで飛び散った油の焦げ跡が有りますね。
こちらはリブアイステーキ。
Tボーンステーキもリブアイステーキも焼き加減はミディアムレアでお願いしたのですが、リブアイステーキのほうがレア感が強いですね。と言うか、こちらが本来のミディアムレアかな。
テーブルにサーブされたステーキはスタッフの手によって皿の縁で少しだけ熱を加え、ひとりひとりの皿へ。
左手がリブアイ、右手がサーロイン、サーロインに隠れていますが、奥がフィレ。となります。
まずはサーロインからひと口。
…。
…。
うーん。こんなものか?
もしかしたらぼく自身の体調が悪いとか、このご時世ですし、そう言うこともあるかもしれません。
若干心配になったのでグルメな友人に感想を求めると、感想は…店を出たら言います、と微妙な表情。
まずサーロインですが、肉質は詰まっており固め。
ピーター・ルーガーのステーキは、店舗1階の熟成庫で28日以上のドライエイジングを掛けているそうですが、ドライエイジングゆえの肉質の凝縮感は確かに有るのかもしれません。
しかし、それであれば肉自体の旨味もギュッと凝縮されているはずですが、その肝心の旨味の凝縮感が感じられない。
そして熟成香に関しては「雑味を感じる不要な熟成臭」はカットするのがピーター・ルーガー流とありますが、香りも乏しく、ウリであるはずの熟成の恩恵を感じられなかったと言うのが本音です。
フィレのほうがもちろん肉質はしなやかですが、味わいについての傾向はサーロインと同じです。
火入れについてはTボーンステーキは少し強すぎだったかもしれません。
断面を見て頂くとおわかりのように、ミディアムレアではなく、ミディアム〜ミディアムウェルと言った感じです。
救いだったのはお値段が安いリブアイがまずまず悪くなかったこと。
リブアイのほうが味わい、香りともに豊かでした。
この日訪問したメンバーのなかのひとりはアメリカで有名どころのステーキハウスを歴訪している猛者なのですが、食後感はぼくと似たり寄ったり。でした。
そんなぼくたちは、満席続きでエイジングが足りていない、食品流通の混乱で本来調達したいレベルのプライムビーフが入手できていない、焼き手の経験不足、と言った仮説を打ち立てたのですが、後日、業界のかたにこの日の憤懣をぶちまけたところ(笑)、そのかた曰く、日本の気候に合わせたエイジング設備、エイジング手法の合わせこみが完全にできていないのではないかな、と言う意見を述べておられました。
ちなみに2種類オーダしたサイドディッシュは悪くなかったです。
ソテーにしたブロッコリも後をひく味わいでしたし、クリームを使わず澄ましバターで仕上げる「クリームドスピナッチ」(ほうれん草)もまずまず。
気を取り直してデザートです。もう腹いっぱいですけど。
デザートは3種類を4名でシェア。
ケーキ類にはたっぷりのクリーム。アメリカンですねえ。
こんなビジュアルですし大味なイメージがあるじゃないですか?
でも、デザートはいずれも上等。
もちろんアメリカンスタイルの重量感たっぷりの甘さなんですが、品のある甘さで腹いっぱいにもかかわらずおいしく頂きました。
前菜も上等、サイドディッシュもまずまず、デザートも良かった。言うまでもなく雰囲気は最高。
つまり、ステーキ以外はけっこう良いです(笑)。
あとはサービススタッフ。
若いスタッフが多くフレンドリーなところは良いのですが、とても客単価2万円オーバのレストランのサービスとは思えない大味具合。でした。
会話を遮ってまでポイントサービス(そんなものが有るのですよ)への登録をリクエストされたり、ね。
高級店なら高級店らしい格調のあるサービスをお願いしたいものです。
こちらの期待値が高すぎたせいかだいぶがっかりしてレストランを後にしたのですが、別の日に訪問した友人によると、その日のTボーンステーキはかなり良かったとのこと。
タイミングが悪かったのか、それとも重要顧客とは認められず良い部位が出てこなかったのか、真相は闇のなかですが、今回の料理がピーター・ルーガーの本来の実力とも思えません。
料理のクオリティやオペレーションが落ち着いた頃にもう一度訪問したいですね。
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・住所 東京都渋谷区恵比寿4-19-19
・電話 050-3311-3744
・備考 特になし。
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またぞろ「まん延防止等重点措置」なんかが発令されてしまいなんとも冴えない新春ですが、本年もぼちぼち食べもの日記をアップしていきたいと思います。
2021年の年の瀬も迫ったこの日は、ひさしぶりに田町の「焼肉赤身にくがとう33895 田町・三田店」を訪問。
「焼肉赤身にくがとう33895 田町・三田店」は2014年に人形町にオープンするや、またたく間に東京でも屈指の人気焼肉レストランとなった「焼肉赤身にくがとう」の支店。
この日は「肉風呂VIPルーム」なる個室をお借りしての貸切焼肉会。
壁面の富士山は日本に3人しか存在しないと言う銭湯絵師のひとり、田中みずき氏が手がけたものだそうです。
この日の料理はおまかせのVIPコースでお願いしてみました。
それではさっそく肉ざんまいのVIPコース、ご紹介してきましょう。
【前菜】
【刺身】
この日のハツはたまり醤油漬け。たまり醤油の香りがハツの風味を引き立たせます。
【握り】
うっすらと赤みを帯びたレア気味の握り。食欲をそそるビジュアルです。
粒の生胡椒も良いアクセントになっています。
【逸品】
「ツラミ」は「面(ツラ)の身」、頬のあたりの部位ですね。
中華風に仕立ててあるのがユニークですね。
焼きものはまずはこちらから。
【焼肉】
タンは毎度ながら素晴らしい厚みが目を惹きます。
これを外側にカリッと焼き目が付くくらい炙ってから頂くと…中からはジュワッと肉汁が溢れ上等なタンの香りを堪能できます。実に上等なタンです。
ハツもハツらしい味わいと香りが濃厚でいながら雑味なくスッキリとした風味。
そしてハラミ。
ひと目見てそのクオリティを確信できるような美しいハラミは、ハラミならではの旨味の濃さに加え、きめ細かく入ったサシによる芳醇な香りも有り、絶品。
こう言うハラミを食べてしまうと、普通のハラミでは満足できなくなってしまうのが困るんですよね(笑)。
この3種をずっとリピートして食べていたいくらいですが、コースはまだまだ序盤。
【特選ホルモン】
ミノはレモンの風味でさっぱりと頂きます。
【特選肉】
もう、見るからにウマそうなカルビ。
サシはたっぷりと入っていますが、頂いてみるとこれが実に上品なサシの風味。
香り高く、それでいて必要以上に重くないサシのウマさ。
そしてミートオンザライス。
そうそうこれこれ。ウマい焼肉にウマいご飯。最高ですね。
【箸休め】
箸休めはかわいらしい牛さんのサラダ。
【名物】
後半は名物料理が続きます。
まずは大判のイチボをすき焼き風にして頂きます。こちらはサッと手際よく炙ることが肝要なので、スタッフが1枚ずつ焼いてくれます。
焼き上がりをくるくるっと丸めて溶き卵に沈めて頂きます。
甘辛いたれに卵が絡み食欲をそそる風味ですね。
名物のふた品目は「和牛赤身ロック」。
こちらもスタッフがガーリックバター醤油に何度もつけ焼きしながら仕上げます。
たれが炭火で燻されることで肉が香ばしく焼き上がります。
そしてこちらを焼肉をおいしく頂くためにブレンドされたと言う「焼肉専用米」に乗せて頂きます。
「焼肉専用米」なんて、ずいぶん大げさな、って思うじゃないですか。
いや、ぼくも実は一瞬そう思ったんですよ。
しかしひと口このご飯を頂いてびっくり。
焼肉の香りに負けない甘く華やかなご飯の香りは「焼肉専用米」を名乗るにふさわしいクオリティ。
このご飯でたらふく焼肉食べたい。
先ほどの卵を掛けてTKGバージョンも良いですね。
【焼肉】
最後は希少部位のフンドシと味噌だれのホルモンとなります。
【〆物】
この日はさっぱりとした豆乳仕立ての冷麺。
腹いっぱい焼肉を食べたはずですがスッと胃の中に収まる滋味深い味わいでした。
デザートにプリン風味のかき氷も頂き焼肉VIPコース、完成。
肉に対するこだわりに満ちたハイレベルな焼肉にこの日も大満足。
肉を喰らう楽しさを再発見できる至福の焼肉コース、焼肉好きのかたにぜひオススメしたいですね。
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・住所 東京都港区芝5-12-7
カゾール三田 1階
・電話 03-6435-2983
・備考 予約はお早めに。
・参考記事 2019年12月03日「田町 焼肉にくがとう33895 田町・三田店」
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土曜日はちょっとした用事で秋葉原へ。
ちょうど昼どきだったので、少し足を延ばして上野広小路まで昼食に出かけたのでした。
ぼくのなかで上野広小路グルメと言えばまずはとんかつ。
ぼくはとんかつと言う料理が大好きなのですが、その原点とも言えるとんかつ屋さんが上野広小路の「井泉」。
亡くなったぼくの父親もとんかつが好きだったのですが、その父親が連れて行ってくれたのが「井泉」だったのです。
とんかつ自体の味わいもさることながら、下町の老舗情緒に溢れる店構え、店内の雰囲気、あれがいいんですよね。
そしてとんかつ好きの父親が良く言っていたのが、御徒町には「井泉」のほかに「蓬莱屋」と言うとんかつ屋があって、ちょっと高いんだけどそこのひれかつもウマいんだよな、と言うことでした。
そのことばがずっと印象に残っていて、「蓬莱屋」にもいつか行きたいいつか行きたいと思ってはいたのですが、上野広小路に来るとついつい足は「井泉」のほうに向かってしまって、結局ずっと行けずじまいだったのです。
そしてようやくこの日は意を決して「蓬莱屋」へ。
それにしてもどうですこの店構え。昭和の風景って感じがたまりません。
そう言えば映画監督の小津安二郎氏も「蓬莱屋」のファンだったそうですが、いかにも小津安二郎氏が好みそうな風景です。
暖簾をくぐり引き戸を開けるとそこはすぐ鉤の手になったカウンター席。こぢんまりした店内です。
13時過ぎですが土曜日のせいでしょうか、かなりの混み具合です。
お品書きはいたってシンプルで、ひれかつ(3,300円・税込)、一口かつ(3,300円・税込)、串かつ(2,200円・税込)、そして一口かつと串かつを御膳にした「東京物語御膳」(2,800円・税込)の4種類。
お品書きにロースかつが無いとんかつ屋さん、珍しいですよね。
なにせ初訪問ですから、やはり看板メニューから行くべきですよね。
「蓬莱屋」のとんかつは低温の油でゆっくり揚げていくタイプ。なので、注文してから少し待つことになります。
老舗のカウンターでのんびりととんかつの揚がりを待つのもなかなか乙な時間です。
待つこと20分くらいでしょうか、ついにひれかつとご対面。低温で揚げられていますが、いちど高温で衣に焼き色を付けていますので、思いのほかカラリとした衣です。
肉質自体はひれと言うこともありますが、主張が無く非常にあっさりとした味わいです。
ジューシーではありますが、豚肉ならではの力強さ、香りと言った点ではちょっと物足りなさを感じるかもしれません。
しかし、衣が薄づきであることも相まって、とんかつ自体の印象はとにかく軽やか。
かなりのご高齢のご夫妻もカウンターでひれかつを楽しんでいらっしゃいましたが、このひれかつなら確かに油の重さをまったく感じません。
そしてひとつ付け加えたいのがご飯と味噌汁のウマさ。
ご飯はひと粒ひと粒が立っていてぼく好みの炊き加減。
最近は炭水化物を減らしているのでお代わりはご法度と自分に言い聞かせているのですが、この日は禁を破ってお代わりを頂いてしまいました。
味噌汁も味噌の香りが良く実に上等。
とんかつに3,300円、高いと言えば高いのですが、老舗ならではの空気感、雰囲気も含めた値付けと捉えるならば納得感は有ります。
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・店名 蓬莱屋
・住所 東京都台東区上野3-28-5
・電話 03-3831-5783
・備考 特になし。
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