この日は丸の内でちょっとした買物を済ませてから、人づてに評判を聞いて行ってみたかったスリランカ料理レストランを訪問。
訪れたのは五反田。
五反田駅西口を出て、目黒川に沿って目黒方面へ。
「ミート矢澤」の前を通り過ぎて首都高目黒線にぶつかって右折すると、鼻腔をくすぐる異国の香り。
看板を確認するまでもなく、ここがお目当のレストランであることがわかりました。
看板には「スリランカ食堂」、「Maido ohkini Sri Lanka Syokudou」と書かれていますが、正式な店名は「アラリヤランカ」と言います。
店頭にメニューが貼り出されていたので入店前にチェック。
お。これこれ。「ランプライス」。
今日の目的はこの「ランプライス」なる料理を頂くことなのです。
ランプライスの前にひと品。
スリランカ風チョップドサラダと言った趣のサラダです。
シンプルですがほどよくスパイスの風味がアクセントになっていてなかなか良いです。
ただ思いっきり生の玉ねぎが投入されているので、玉ねぎの辛味で胃がひりひりします。
そしてこちらが「ランプライス」。です。
そもそも「ランプライス」とはなんぞや?と言う話なんですが、「ランプライス」は「Lamprais」と綴り、Wikipediaを読みますとこのように書かれています。
Lamprais (English: Lumprice) is a Sri Lankan dish that was introduced by the country's Dutch Burgher population.
Lamprais is an Anglicised derivative of the Dutch word lomprijst, which loosely translated means a packet or lump of rice.
ランプライス(英語:Lumprice)は、スリランカの料理で、オランダ人のバーグラー族が広めたものです。
ランプライスは、オランダ語の「lomprijst」を英語化したもので、大まかには「米の包み」という意味です。(DeepLにて翻訳)
インターネットで検索しますとどうやらスリランカに古来から伝わる料理ではなく、スリランカがオランダの植民地であった16世紀ごろに生まれた料理のようですね。
伝統的なレシピですと、ビーフ、ポーク、チキンの3種類の肉のカレー、野菜、ゆでたまごなどをライスとともにバナナの葉で包みオーブンで熱して食べるようですが、現代では肉が1種類になっていたりとさまざまなアレンジがなされているみたいです。
熱々のバナナリーフを開梱するとこんな感じ。
湯気とともに立ち上るバナナリーフの香り、スパイスの香り、ココナッツの香り。
イエローライスの上には具材がたっぷり。
チキン、ココナッツサンボール(ココナッツを使ったふりかけ)、ナスモージュ(玉葱の煮込み)、じゃがいものスパイス炒め、そして真ん中にゆでたまご。
とにかくライスも、ひとつひとつの具材もみんなたっぷり。
果たしてこれはひとりで平らげるべきボリュームなのか一瞬悩みましたが、ウマいのですべて頂きました。
ちなみにいちばん気に入ったのはじゃがいもでした。これだけ単品で欲しいくらい。
けっこうなボリュームをひとりで頂いてしまったのですが、油分の少なさと程よいスパイス感のおかげでしょうか、さらっと食べられて、後から胃にもたれる感じもしません。
ランプライス、初めて頂きましたが、ちょっと癖になりそうな味わいでした。
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・店名 アラリヤランカ
・住所 東京都品川区西五反田2-12-15
五反田リーラハイタウン 1階
・電話 03-6885-5851
・備考 特になし。
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この日はちょっとした記念でたまには豪勢なランチを食べようと言うことになったのです。
食事のあとは新宿に用事があり、そのため新宿付近でレストランを探したのですが、これが意外に難問。
そう言えば「ミッシェル・トロワグロ」があるじゃん。と思って調べてみたらなんと一昨年末に閉店しちゃっていたのですね。残念。
そうだ、新宿に限定するから選択肢が少ないんだな。代々木まで候補を広げると…あるじゃないですか。
あの名店が。
そんなわけで訪問したのは「レストランキノシタ」。
ずっと前からいちどは訪問したいと思っていたのですが、代々木と言うロケーションがぼくの行動範囲から外れていることや、人気のあまり予約が取りづらいこと、あと、木下和彦シェフ、ちょっと怖そうだし…って感じで、この日まで訪問がかなわなかったレストランです。
ランチは2,500円、4,000円、5,300円、そして8,500円と4種類のコースとなります。
この日はちょっとしたお祝いですし、せっかくなので8,500円のMenu Cをチョイスしてみました。
アミューズは烏賊と米と使ったコロッケ。
フレンチの前菜でこの「アツアツ感」。新鮮ですね。
いきなりのジャブにコースへの期待が高まります。
前菜のトップを飾るのは北海道産のオイスター。
オイスターの身の下にはオイスターを使ったクリームを敷き詰め、海水のジュレを掛けてあります。
こちらはフランス産の兎、フォアグラ、プラムを使ったテリーヌ。
兎の肉の食感、そして滑らかなフォアグラの食感。対比が鮮やかです。
プラムのふくよかな甘さもアクセントとして効いています。
これ、とても好きなタイプの前菜です。
蛸の名産地と言えば西は明石、東は佐島。
こちらは神奈川県横須賀市の佐島の蛸を使ったひと品。
ちゃんと自分の店で蛸を茹で上げるような鮨屋(だいたいは高級店ですよね)で蛸を頂くと、蛸自体の持つ味わいの濃さに驚くことがあります。
この蛸も蛸自体の味わいの深みに驚きます。
アスパラガスやブロッコリなどのみずみずしい味わいと香りにバジルの芳香が絡み合い鮮烈な印象を残すひと皿です。
そしてブーダンノワール。
ひさしぶりにブーダンノワールを頂きました。
ブーダンノワールはフランスの伝統的なシャルキュトリの一種で、豚の血を使ったソーセージです。
豚の血と聞くとちょっと身構えてしまいますが、上手に作られたブーダンノワールは癖なくそれでいてコクのある味わいを持っています。
近年は豚の血の流通量も少ないらしく「レストランキノシタ」ではフランスから取り寄せたものを使っているとのことでした。
もともとは屠った豚をあますところなく利用しようと言う生活の知恵、と言った類の料理だと思うのですが、こうなるともはや高級料理、珍味の趣ですね。
こころして頂きましょう(笑)。
「レストランキノシタ」のブーダンノワールはパイ包みにし、定番のりんごのピュレに軽くシナモンを振って添えてあります。そしてガルニチュールには洋梨と柿。
ブーダンノワールのコクに果実の甘みが絡み合い、濃厚でどっしりとした風味です。
とても洗練されたブーダンノワール。
次の料理は魚介を使ったひと皿。なのですが、一般的なフレンチのフルコースのポワソンとはだいぶ趣の違うスタイルです。
ご覧の通り、意表を突くパスタ仕立てのポワソン。
いくらや甘海老、雲丹などの魚介をふんだんにあしらったカッペリーニは、魚介自体のウマさがシンプルにストレートに表現されたさわやかなひと皿。
濃厚なブーダンノワールからの、この落差。でも、単にひとを驚かせるだけではなく、ちゃんと料理としてウマいのだから始末に負えない(笑)。
フレンチの文法からしたら「破格」となりそうな料理ですが、この自由さも「レストランキノシタ」の大きな魅力なのでしょうね、きっと。
そして肉料理は蝦夷鹿ロースのロースト。
予約の際に、おまかせであってもメインディッシュについては好みを聞いて食材をアレンジして頂けると聞いていたのですが、当日食材を確認したところ蝦夷鹿とのこと。
ぼくも、この日の同行者も鹿は大好物。一も二もなくここはもう、蝦夷鹿一択ですよね。
この時期の鹿だからでしょうか、それとも部位のせいでしょうか、ひと口頂いてその味わいの爽やかさにびっくり。
鹿は冬にウマいと言うイメージだったのですが、この時期の鹿がこれほどまでにウマいとは。
ぼく自身は夏鹿はあまり食した記憶がないのですが、鹿好きの同行者曰く、味わいは夏鹿のそれと申しておりました。
濃厚なブーダンノワール〜爽やかな魚介のカッペリーニと言う、振れ幅の大きなコースの流れを、格調高い肉料理でしっかりとフレンチの王道に戻すあたり、手練れの木下和彦シェフの面目躍如と言ったところでしょうか。
実に良いメインディッシュでした。
上等なメインディッシュの余韻に浸りながら頂くアヴァンデセールは洋梨とカシスのグラニテ。
デセールはフォンダンショコラとピスターシュのアイスクリーム。
リッチなショコラの味わいで至福のランチは完成。
フレンチってぼくたち日本人にとっては「ハレの日」のための料理と言う面が大きいですよね。
ですから、ビジュアルの美しさだったり、驚きのあるプレゼンテーションだっとりと言う要素ももちろん大切なのですが、やはり料理の本質は食べてナンボだと思うのです。
ビジュアルの洗練と、頂いたときのしっかりとした力感。その両面があってこそのフレンチの楽しさだとぼくは思うのです。
初訪問の「レストランキノシタ」の料理は、ひと皿ひと皿の輪郭の太さと香りの高さが印象的で、フレンチを頂く楽しさに満ちていました。
充実のすばらしいランチでした。
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・店名 レストランキノシタ
・住所 東京都渋谷区代々木3-37-1
エステートビル 1階
・電話 03-3376-5336
・備考 特になし。
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